「〜♪」
 槍を手入れしているある日。
 鼻歌歌う磨智がリビングの扉をあけました。

ごにん暮らし その2

「…ご機嫌だねぇ」
「うふふ」
「なにかいいことあったの?」
「そうだねぇ。わかる?」
 そりゃあ、まあ。
 磨智はまあ、割といつも笑顔だけれども。
 今日はなおさらきらきらしてるもの。そりゃあ、分かる。
「…なにがいいことあったの?」
「いいこと、とはちょっと違うかな。おもしろいこと」
 磨智ちゃんったら笑顔が怖い。
 なんで怖いのかよくわからないけど、怖いものは怖い。
 てこてこ窓へと寄っていく磨智が、にこりと微笑む。
「マスターも一緒に見る?」
「へ?」
 そこにいるということは庭をだろうか。
 庭見るってお花でも見………
「…あれはなにをやっているの」
 見るのかなと思ったら広がっていた驚愕の光景に呟く私に、磨智ちゃんはやっぱり笑顔です。
「ベム君にね、空き瓶500個積める人が緋那の好みって言ってみたの」
「あれは500個を目指しているのか!?」
 そんなに積まれてたまるか!?
 だってなんかぐらぐらしてて変な顔書かれてるのとかも不気味な液体入ってるのとかも混じってて、マジ怖い! 嘘だといってほしい!
「うん。目指してるって。今は30くらいかな」
「なんでそれを信じるんだ!」
 アホなのか! あほだ!
 アホなうえにどうなんだ、緋那がそんなん好きだと思ってるのか! …あ、いやもう一つ!
「磨智も! なんでそんなウソつくんだ! うちの庭にアホわいたと思われるだろうが! 事実だが!」
「面白いから!」
 うわあ言い切った! この子言い切った!
 つーかこんだけ叫んでれば聞こえているはずなのにベム君が無反応に缶積み続けている件について私はどのような感情をいだけばいいのだろうか!
 君はこっちに何か感想ないのか! その眼は緋那しか映らないような特別仕様なのか! ちょっとありえそうで怖い!
「まあまあ、落ち着きなよマスター。そんな面白い踊りを踊らないで」
「悩み頭を抱える主に従者がひどいこと言った!」
「あ。それ頭抱えてたの? わさわさ動いてるから、踊りかと…まあ、そんなことより。あれさ。だまされる方も悪いと思わない?」
「それは…あそこまで言うと、そんな気も…ちょっとだけ…」
 っていうかそんなこと言われたよ。私の苦悩そんなこと言われたよ。
 まあそんなことだけどね。
 いやもうどんなことだ。そしてこんな話してる間にも40個くらいまで謎の塔が伸びた。見れば見るほど不気味だ。
「私も信じるとは思わなかったの」
「でも信じたのを訂正もしないんだ…?」
「だっておもしろいし。
 …まあ。緋那に嫌われるようなことは、言わないよ」
「…それもそうだろうけど。あきれられるのはいいのか」
「そこはまあ、自己責任だよ」
「自己責任って…」
 あくまで穏やかに反論されて、うっかり頷きそうになる。
 うっかり……
 う、うなづいていいのだろうか。
「……磨智ちゃんは彼が嫌い?」
「ううん? でも私、緋那が好き」
 色々複雑な気持ちで聞いたら、あっさりと答えられてしまいました。
 あっさりすぎて反応に困ります。
 神妙に言われたらもっと困ったかもしれません。
 こちらの気持ちを見透かすように、大きな瞳がすいと細まる。
「お友達的な意味で。だけど。アホにはやりたくないよね」
 可愛い顔にすごみっぽいものにじませて、発せられる宣言は……
 ……嫁姑戦争の幕開け?
 嫌だそんなん。っていうか誰が嫁で姑なのだ。
「…じゃあ、ともかくアレを止める気はないの?」
「マスターが言えばやめると思うけど。でも、何も言わなくともそのうち諦めるって。無理でしょ500個は」
 この問題に、私にどう接するべきだろう、いろんな意味で。
 いろんな、意味で……
「……そうだねぇ」
 色々と悩んだ結果、最高にその場しのぎの言葉がでました。
 今日も126番地は平和です。平和なんですってば。

 ああ、ちなみに。
 その時フラグがたたのか。ベムは見事500個積んだりするんだけれども。
 それはまあ―――別のお話ですね。

 ふ。混乱のあまり語り口調だぜもう!

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