「ががっと頑張ってミドルクラスを目指すぞ!」
『ああ。そりゃあいい心がけだ。けどよ、かなた』
「なんだいメー君!」
『そんなすみっこでがたがた震えてたら永遠になれないと思うぜ』
「だってダンジョン怖い!」
あきれた口調のメー君に、私は返す。
暗いダンジョンの入り口、冷たい風が私をなぜた。
さんにん暮らし その4
『いままで初心者のお試しにはなんてことなく入ってただろうが。ここは何が違う』
「お金が違う」
あきれたようにを通り越し、明確にあきれた声のメー君に、私はきっぱりと答える。
『…金?』
「そう。お金。暗闇の洞窟はね。許可書がいるのよ。許可書はね、高くついたよ」
なんてってホントなら金塊をもらうはずなのにこれと交換したわけだし。
ステラ12色ぶん。
実に高くついた。
「その元を取れなかったらと思うと怖くて怖くて…!」
『……お前ってさ。なんていうかさ。残念でさ。色々とずれてるんだな』
「しみじみといまさら何さ!?」
『なんにしろこのままじゃダメだろ。いくぞ。ほら』
「う。うう。そうだねそうだけどさあ!」
勝手にずんずんと歩くメーに、私も続く。
結果? 聞くなよ。の世界だったことは。
わざわざ日誌にするまでもない、私とメー君と緋那ちゃんとの秘密です。
『―――ふむ。そういうことをしたりしょっちゅう武器ばっかり壊しているから。
マスターは貧乏なんだな』
「わあ緋那ちゃんがあきれてるぅ…」
帰宅後。
今日もお財布が寂しいことを説明したら、緋那ちゃんは厳しい顔でそう言いましたとさ。
…厳しく見えるのは、やましいせいかもね☆
『いや。心配している。
金勘定をもっとちゃんとしろ。しばらくは対人でレベル上げろ。お前にダンジョンは早いんだろ』
いやまあ。その通りだけど。
仮にも戦闘系として、切ない事実だなあ。
…いやまあ。ホントに。いいんだけどさあ…
「…でも。そうしてこれから戦闘頑張るなら、あれが必要だね!」
『私はそこで腹筋してるメーじゃないからアレじゃわからない』
『いや俺もあれじゃわかんねーよ!?』
『そうか。アホ同士分かり合っているかと思っていたが、それなら謝るよ。
ともかく、あれってなんだ』
「必殺技!」
この町では必殺技を登録するという謎のシステムがある。
それは皆様とても個性的で。
夢があふれてたり龍がこきつかわれてたり色々だけど、私は!
「一度イケメンビームとか打ってみたい!」
あこがれを素直に口に出した私に。
『なあメー。私はマスター選びを間違っただろうか。目の前にアホがいる』
『まあ俺もそう思ってるけどアホなりに頑張ってるからさ。見捨てないでやってくれよ。なにしろアホだから』
返る答えはわりと極寒。
うむ。ひどいな。言われるとは思ったけどさ。っていうか。
「二人で分かり合わないで!? いや分かり合うのはいいが私のあほさをネタにしないで!
ちょっとした乙女の夢、ジョークなんだよ!?」
『乙女とはイケメンビームとやらをうち打つのか。知らなかった』
『緋那。納得するな。あとこいつ絶対イケメンビームがなんなのかも考えてないぞ』
「くっくっく。そこまで見破ったことは誉めてやろう!」
『ほめられたくねーよ。んなことより適当に必殺技いれろよ』
乙女の夢その2含み笑いの悪役ごっこに、メー君は付き合ってくれなかった。
くすん。泣いてやる。
と、しなをつくるも面倒だったので、真面目に考える。
「じゃあメー君あたっく」
『嫌だ』
「龍に関係した必殺ってよくある感じなのに。もしくは緋那ちゃんさーぶ」
『それは私がサーブされるのか? かなたをサーブするのか?」
「もしくはただのトス」
『だんだん弱そうになってるのは気のせいか?』
むう。
この後も色々と言ってみたけれど、そのとりあえずの候補のことごとくに二人からつっこみが来る。
かわるがわる、淡々と。
だんだんとすねた気持ちになったりして、思わず頬をふくらま、せるのはキャラじゃない気がしたからため息をつく。
「ったく。ああいいえばこういう龍達だな。
んじゃま、必殺は『必ず殺す技って物騒ですよね』でいいや」
『語り掛けるのかよ』
「この町の戦闘ってコミュニケーションでしょ?」
『間違ってないがそれでお前はいいのかと若干不安だよ。俺は』
なおもなにか言いたげなメー君を無視して、紙に必殺技を書く。
これを黒子さんの住処こと役所に出せば、オリジナルな必殺技が広く知れ渡るんだよね。
いつも思うけどあの黒子さんってなんなのかな。なんでこんなに色々できるのかな。でもまあ。いいか。便利だし。
「ふ。戦闘系っぽいね!」
思わず拳を握ってみる。
後ろで二つため息の気配を感じた。
…むう。本当。
本当心配性というかお説教が多いな。私の龍は。