とんとんかんかんごっ、かんかんかーん。
「おおおおおおおおお!」
メー君が三時間くらいでやってくれました!
そんな感じに復活した壁を前に、私はぱちぱち拍手をした。
さんにん暮らし その3
うんうん、キレイキレイ。
こうして、今みたいに。庭から眺めると、傷なんて目立たない感じ。
「実は内側からよくみたらめっちゃぎざぎざした感じにツギハギだしちょっともろそうだけどすごいよメー君!」
『よく見るなよもういっそ』
いやよく見ちゃったんだからしかたないんじゃないかな。
なおも庭でぱちぱち拍手をしても、隣の彼の表情は曇っている感じ。むう。これは、まあ。余計なこと言っちゃったから当然かな。
「すごいんだねえ。さすが伝説の生き物!」
『そんなところで伝説っぽさを感じないでくれよ!』
フォローしたのに余計嫌な顔された気がします。
むー、むー、むー。
人間関係って難しいね。メー君は龍だけどさ。
ひそかに落ち込んだりする間に、メー君は金槌を置く。
『あといっとくが。これ以上キレイにはなおせねぇからな』
「それはそのうちお金ができた時に材料を買うさぁー」
…というか、メーこそ落ち込んだのかもしれないと思うが、まあ、口には出さないでおこう。
『材料だけかよ』
「それまでに器用な子とかに出会えればいいのに!」
『お前は龍になにを期待しているんだ!』
照れそうな言葉を隠して、軽い本音を告げてみれば。それはそれはいい感じに突っ込みが入る。
うむ、彼の突っ込みスキルとでも言うべきものが着々といい感じになっている気がする。
ん、でもメー君はどっちかっていうとぼけかな。
いや。私別にお笑いの大道芸人目指しているわけじゃないから、どうでもいいけどさ。
「まあ、なんにしろなおったのはよいことさあ。
お祝いにお肉でもやこうねぇー」
『…俺に大目にとかくる?』
「食卓は戦場なので確約はできません」
『そんなことだけマジ顔でいうなつーの、このアホマスターが…』
そんなこんなで、キッチンに帰ると。
えぷろんつけたもふもふした生き物がいました。
か、かわいい。
とくんとときめく胸に湧くのは、なにしてんのという言葉。
けれどそれを声にする前に、緋那はびしっとこっちにお玉をつきつけてくる。
なぜ。つきつけるのか。お玉を。
『名誉を挽回しようかと思って、ご飯を作ってた』
色々と聞く前に宣言された。
うむ。実は言われるまでもなく、よい香りは感じていた。
感じてたけどさ。
「…じゃあ、とっといたお肉、いっぱい使っちゃった…?」
『いや。昨日お前とメーが肉を争い醜い争いをしているのは目撃したからな。
貴重なものだと思って、手はつけてないよ』
「私の生存をかけた決死の決勝みにくい争い言われた!?
つーか一晩にしてマスターからお前に降格!」
『あー…あー。それは……あ。…ああ。かなた。ほら、キノコ好きか? ちょっと森まで行って拾ってきたよ』
「これがいい匂いの正体か! 大好き!」
ごまかすように差し出された小さなお皿を受け取り、くいっと飲んでみる。
あ。うま。私が作るよりうま。
っていうか私、たいしたものできないし。作るとどうも甘くなっちゃうんだよなあ。欲望が出て。甘いモノ大好き。
それにこの町、塩拾えない割に砂糖は拾えるからな。つい。
「おいしいし、スープにするとちょっとおなかにたまるね…く。なんて素敵なお仕事。さすが伝説の生き物!」
『自分からやっておいてなんだが、その辺で伝説っぽさを感じないでほしいな…』
あ。そこは共通なのね。
すでに勝手にとりわけてうまうま食い始めたメー君と共通の認識……って。
「抜け駆けなんて私はお前をそんな子に育てた覚えはなくてよだよメー君!」
『お前に育てられた覚えもない!』
「ああいえばこういう! このえーと、いやしんぼ!」
『…ほら。またアホなやり取りはじめないで。どちらもちゃんと席につけ。
パンもあっためなおしたから。ご飯にしましょう』
緋那が静かに言うと、メーは馬鹿にするように鼻を鳴らしたっぽい。
『別どう食おうといいだろ。どっちが人間かぶれだよ』
『人間でも龍でも礼節を守り生きるべきだろう。あと食べこぼすな。食べ物の残りとかがあるとあの黒いのがよってくるらしいからな。
お前ごと焼くと困るから、やめて』
『いやちょっと焼かれるくらいなんともないけど、お前顔怖っ!?』
私が言われるままに席につく間にも続くやり取りに、くすりと笑いが漏れる。
いいなあ。にぎやかで。
それにこう、色々分担して暮らすって、家族っぽくていいなあ。
私龍が戦闘種族とかそういうのよくわからないし、こうしていられるとすごくうれしいわけで。
彼らに龍っぽい願望があるなら、勝手にかなえてくれるといいな! 邪魔しないし!
私は私で私の目標を―――……
…目標を…
目標が、いまいち決まってない気もするけど、頑張るよ。
だってねえ。まるでねえ。今のままじゃさあ。
『んだよ。かなた。いきなり涙目になって』
「い――――いやいやいやいや! 私冒険者だから! そしてトレハン目指すから! 目指してるから、戦闘職! ニートじゃないよ!」
『叫ばれなくても知ってるけど…ホントにどうしたよ』
「午後からの探索に向けて気合をいれてる!」
『そうか。気合を入れるのはよいことだ。ほら、マスター。パン』
「わああいかなたパン大好き!」
『そうか。よかった。でも食事中は落ち着きさい』
『お前このテンションにれいせーな奴だな…』
パンをもぐもぐする間にも、二人がいろいろ言ってるけど、無視。
いっぱい食べて、かせがなきゃ。
稼いで、しゃんとしとかないと。家主的にピンチ。
固い決意を込めてかみしめるパンは、ちょっぴり汗のような味がした。