「お前もなんだかんだで熟練度とかはあがってきたよなあ…」
「なにしみじみと」
「しみじみするだろ。血だるまの頻度はまあ減ったなぁ、負けるけど。と思ってさ」
「くっくっく。これでも一応戦闘系だしね! いつまでもオーバーキルされてばっかでは―――」
ないよ、と言おうとした時、足元に衝撃。
あ。こけた。
―――そう思った時、意識が暗転した。
よにん暮らし その8
「…感動して損したな」
なぜ暗転したかって体力が1の状態だったからさ。
つまりは蘇生を経て自宅リビングでぐでーっとする私に、メーのいやそーな声がかかる。
とても失礼だ。しかし真実だ。
ふふ。まったく。ままならないでやんの。
「けどまあ、マスターが強くなるのは喜ばしいよ。ずだずたのマスター見ていい気分はしないし」
「え。私そんなにずだずたなの…?」
苦笑気味の磨智に思わずおびえる私。脇に立つ緋那が頷く。
なんとなくテーブルに集まっている一同にそれぞれお茶を配りつつ、丁寧に教えてくれた。
「ダンジョンだとすごいことになってるな。見せてやりたいくらいだ」
「えええ。見たくないよ自分の死体。そんなの見てどうするの?」
「…今よりチキンになって手がかかるようになるんじゃねーの?」
横手から余計なセリフを吐くのはもうメーと決まってるんじゃないかな。
むうっと横を見ると、へっと鼻を鳴らされる。
へたれのくせに生意気だ。
っていうかこれも結構言いがかりだけどね。ともかくむかっとした。
「なに。私メー君にそんなに面倒をかけたというのか」
「まあ契約主のパーツ回収したり、蘇生したはずなのに眠りこけてんの背負ってきたりが面倒じゃない、ってある意味問題じゃないか」
「契約主のパーツを回収!?」
思わずオウム返してしまいましたよ!?
え、ダンジョンの私、パーツレベル!?
「……まあ、深く考えない方がいいだろう。気にするな」
「…うん。緋那の言う通りだね。おぼえてないって幸せなことだと思うよ。最近はそこまでぼろぼろになることもなくなってきたし」
「え。なにそのマジのリアクション! 大げさだって言ってよ!」
「だってさあ」
「いいややっぱ聞きたくねぇ!」
耳をふさいで思わず叫ぶ。
やっぱりチキンじゃねーかとか言う声色に、揶揄の色はない。
とっても真面目に、すごく真実を語っていると、よくわかる。
だからこそ、うん、すごくこう。
「…い、いつもお世話かけます」
それぞれの反応で頷く契約龍たちに、下げたままの頭を上げられない。
…どうやら私の立場は、とっても低い位置で落ちついったぽいですようん。…うん。
うーん………
「別に君たちに主っぽく扱ってほしいとは思ってないけど、このままじゃダメだと思ったのですよ」
「で。魔鏡に挑み負けたと?」
そんなことがあった次の日、魔鏡と呼ばれる魔物に挑んでぼろっとしてる私に、メー君の反応はつめた…冷たくはないけど、あったかっくはない。
私はぺったり腰を下ろし、彼が見下す形だからかもしれない。
…意地でも立とう。
「負けたといわないで! 今回死んでないだろう!」
「ほかにどういえばいいんだ!?」
「…お、大人の階段上った!」
「大人の階段ってそういうものなのか!?」
つっこまないでよ、いきおいだよ。
嫌だ、こんな血にまみえた階段は。
足をすべらせておっこってしまう、どこかしらに。
「…と、ところでメー君!」
「おう」
「さっき迷わずこっちに来たけど、本物が私ってよくわかるね!」
魔鏡。
それは、相対するものの姿とある程度の能力とを写し取る魔物。
つまり私が負けた時、私とおんなじ姿のモノが二人いたわけなのだけど。
彼は迷わずこちらに来た。
「そりゃわかるだろ、人と魔物だ」
ああ。そういう理由か。
この流れでぼろっとしてる方がお前に決まってるとか言われたらどうしようかと思ってたよあっはっは。
…笑えない。
「…そんなに不思議がるようなことか?」
「うーん。言われてみればまあ、魔鏡は所詮魔鏡だから、私でもわかりそうかなあ…。
でもなあ」
「でも、なんだよ」
なんとなく不機嫌そうな声色に、続きを紡ぐのをちょっとだけためらう。
けどまあ、ここで黙るのも不自然なわけで。
「こういう時は友情パワーって言ってくれると嬉しいじゃないか!」
目をそらして、冗談めかして。色々ごまかした言葉に、軽い笑声が返る。
「お前本当にそういうアホみたいな言葉が好きだよなあ」
「アホにアホとは言われたくないなあ」
「アホにアホとは俺だって言われたくねーっつーのこのアホ」
流れるように毒づいたメーは、軽く肩を下げる。
彼が人の姿をとるようになってから、とても近くなったそこを、少し下げる。
「ほら、とっとと帰るぞ。ちゃっちゃと歩けや」
手をかすためにと下がったそこに、素直に体重を預けてみる。
だるいはずの体は、不思議と軽い。
不思議とではなくそれこそ、まあ。
友情の力かもなあ、などとおもいましたとさ。