ぽつんぽつん。
ぽつぽつぽつぽつ。
ざああああああ。
響く音の変化を形容してみて、ふぅとため息。
こりゃあ、今日は探索はやめた方がよさそうだ。
ふたり暮らし その4
外出を諦めてから、再度窓から外を見ると、やっぱりざあざあと大雨だ。
こんな時に歩き回って探索というのはなんというか、嫌だ。
それ以外の色々も、まあなんていうか。めんどうだなあ。
面倒になって、日誌なんて書いているんだけど。ぽつりとつぶやきが漏れた。
「雨だなぁ」
『雨だなぁ、って。なにわかりきったこといってるんだ』
雨音に負けそうな呟きをきっちり拾って、あきれたようにメー。
腹筋を止めてまで言うセリフなのか、それは。
いやまあ、反応があるっていうのは、いいことだから。何も言うまい。それに関しては。
うーん。でもそれに関して以外は、特に言うことがないわけで。
「暇だなぁ。カジノいってみようかなあ」
『この間大負けして「もう二度といかねえ!」って言ってただろ』
どうでもいいことを言ってみたら、痛い反論が返ってきた。
痛くて何かしら刺さった感じなので、強がってみる。
「それはまあ、時効だよ、みたいな!」
『みたいな、じゃねえ! お前武器バカバカ壊すんだから無駄遣いすんなつーの!』
ずかずかとこちらに歩いてきたメー君が、とってもおこった感じに言ってくる。
言う、というよりは。もう命じる感じ。
おかしいな私主なのに。
いやまあ、それも今更だけど。
「ふ。女の子はね。宵越しの銭は持たないのさ!」
『いやそれ絶対女の子のいうことじゃないよな!?』
「ふふん。随分と女の子について詳しいような口を聞くな! おつりもらうとき定員さんと手がふれあっただけでなんか気まずげだったメー君よぉ!」
『そういうことはさらっと覚えてるんだなお前!』
不機嫌に叫んだメー君は、それでも私の向かいに腰を下ろす。
どすんと乱暴に、怒った風に。
…短気なヤツめ。カルシウム不足かもしれない。ろくなもん食べてないし。
ああ。いや。彼はこう、カルシウムより。
「…メー君は光龍なんだよな」
『なんだいきなり。しみじみと』
「いや。光龍ってさ。太陽が出ないとしんなりするのかなと思ってたけど。元気だなと思って。
でもかりかりしてるから。太陽の光ってカルシウム的なモノなのかと思ってた、今」
『一日雨降ったくらいじゃなんともねーし。太陽の光でカルシウムはとれない。牛乳よこせ』
「メー君…無い袖はふれない」
『…甲斐性のないマスターだな』
うるさいやい。
言いかえさないのは、事実だからだ。
いや決して、お腹が減ったとかじゃないよ。無駄な体力を使いたくないとかじゃ、ないよ。
…おなかは減ったけど。
自然と落ちていく肩。止まるペン。
…うーん。最近コラムを町の掲示板で公開しはじめて。徐々に見てもらえてるから、こういう時に書き溜めようかなーって思ったけど。
もうこれはダメだ。ダメダメだ。
ペンを放り投げて、頬杖をつく。憂鬱な雨だけの外を見ているよりは楽しそうなので、目の前の龍を見つめてみる。
『……なんだよ。そのもの言いたげな顔は』
「いや…なんか。伝説の生物っていうからもっとこう気難しかったりきらーってしたりぶわーってしたりするかと思ってたけど。メー君は普通だね」
『…俺も人間、いや主というものはもう少し威厳のある生き物だと思ってたぞ』
「まあ、それはそれ。これはこれだ。
要はあれよ、メー君」
『んだよ。改まって』
見て、からかってみることに決めた私はにっこり笑ってみる。
「雨がじめじめとなんだか切ない感じだから光龍っぽく発光できない?」
『伝説の生物をお手軽なランプのように言うな!』
「なんだ。できないの?」
『できるがその言い方が気に食わねえ!』
「なんだ。心狭い。
いや違う、あれだ。こういうときはあれだな!」
『あれじゃわかんねえよ!』
「つまらない男ね」
『しなをつくるなよきっしょく悪いな! っていうかどんな言いがかりだ!』
「ちょっとした冗談なのにまた怒る―。やっぱりカルシウム不足だよ、メー君」
『足りないのは誰のせいだ!』
期待通りというか、期待以上にやかましい声に、わざとらしく耳をふさいでみる。
すると彼はますます怒った風に、色々と言いつのってくるので。ともかくうるさい。
うるさいのなんて、あんまり好きじゃないんだけど。
憂鬱な雨音は聞こえないので、よしとしよう。