たまに目にすると、どうしても似ていると思う。
 娘の相棒―――友人の忘れ形見。
 母親によく似た顔と、父親によく似た騒がしさだと、どうしても思う。
 口にださないのは、ほんの少し寂しそうな顔をする妻がいるからだが。
 まあ、そういう顔をさせている時点で。口に出さない方がかえってやましいことがあるようだ。

愛だけで全てが上手く行くなんて思ってはいなくて、それでも、貴方といられたら最高

「だからはっきりというが――――…三秒でふられた相手にみれんはないな…」
 あの頃は男だらけだったからな。
 乳がついているというだけで血迷った部分もあるしな。
 ………それは少し。…少し、大袈裟なんだろうけど。
「…わたしだって。あなたが今もずるずるひきづってるから舞華ちゃんのことをなにかと気にするのよー、なんてねちねち考えているんじゃ、ないんですよね」
 そうは言うものの、妻はふくれた。
 ふくれるだけなら面白いが、悲しそうだ。
 ……悲しまれたくは、ないんだが。
「…本当に。本当になにもなかったんだと、思ってはいるんですけど。『わたしのしらないあなたをたくさん知っている相手』ではあるから。…寂しいわ」
 ああ、確かにその通りだ。
 この女にしられたくない部分を大量に共有した共犯者、の方が感覚的には近い。
 暗くて、冷たくて。行き場がなく、終わりのない。
 人類の敵。それでも命あるものをきっていた、あの感覚。
 今もそれを狩る道具を作っているんだ、まったく変わってはいないのだが。
 いないのだが―――この女には実際目にしてほしくはない世界。
「…ほら、そういう顔」
 どういうべきか、と思っている間に、ぺちりと額をたたかれる。
 非力なそれは、痛くもなんともない。
 ただただ切なく、もしかしたら申し訳ない。
「……あなた、わたしに血なまぐさい話するの、嫌でしょう?
 確かに聞いたら、とっても悲しいし。もしかしたらあなたのことが怖くなったりするかもしれないから。聞ききたいわ、とは言えないけど。…でも、寂しいじゃない」
 寂しい、とくりかえす表情は、それはそれは弱々しい。細い腕と同じく、弱々しい。
 それでも、強いのだろう。そんなことを考えてもなお俺を選んだこの女の方が、よほど。俺より、かつての友人たちより。よほど。
「……お前のそういうところがよくて嫁にしてしまったから。変えられないかもしれないよ」
「そんな嬉しいこと言ってくれなくたって。本当に怒ってはいないわよ」
 別に機嫌をとるつもりでいったわけではないのだが。
 たまに思いついた時くらい、そういうことを伝えておかないと、盛大にむくれるじゃないか、お前。いくつになっても。
 むしろそれを避けるためにいっているんだが。長年の知恵で。
「それにそうね、あなた。その人のこと話すのと同じくらい、彼女の父親の話を嬉しそうにするから。…妬きづらいわ」
 なんだかおかしそうに笑う顔に、つられることはない。ただ、ああと頷く。
「…そうだな。…『同じ』だったかもしれないな」
 少なくとも。
 あの女があの情けない旦那を捕まえて、なんだかんだで暑苦しく付き合っていたあの頃は、もう。
 あの頃はまだ、未練はなくもなかったが、ただ大事だった。…友人だった。本当に。
 本当に、大切、……だったんだがな。
 どこで道が違ったのだろう。あいつらと同じ道をたどらなかった理由はなんだろう。…などと。考えるまでもない。
「おまえに対する感覚と違ったからな」
 幼い頃。
 俺の友人の何人かを奪った魔物が、とても。とても憎くて。
 そのままつっぱしって、空しくなっても。他の道などみえなかった。
 ただ、こいつがあんまりに泣くから。
 嫌だ死ぬなと、馬鹿みたいに泣くから。
 ―――その時に慰められないいつかが、どうしても嫌になってしまった。
「……だ、だから! 機嫌とろうとしても、全然妬かないわけでもないんですからね!」
 単に真実だが、やたらと機嫌を損ねたらしい。
 けれどまあ、この流れではそうとしか聞こえないだろう。
「…まあ、すべて過去の話だ」
「…ごまかしに入った」
「俺は今おまえを選んで幸せだ」
「………ずるい人ですね、いくつになっても」
 かつて、あの女の笑う顔が好ましいと思った。ずっと笑っていればいいと、思っていた。
 けれど、今。
 拗ねる妻に胸がなごむ感覚を知った、今。
 過去がどうあろうが、この女がいればいいと。そう思う。
 置いてきた過去に、そのまま別れてしまったあいつらがいても。
 思ってしまうんだよ。どうしよもなく。





まあ色々言ってはいるけど須堂父が神宮母に抱いていたのは恋心です。でもその後も友情を優先するような関係だったのも確かです。
内心微妙に思うこともあったのかもしれないし、それまでに比べれば疎遠になったけれども。ドSとSじゃあわないし、どうあがいても付き合わなかっただろうな。
ついでに人生の伴侶(文字通り)に巡り会ったせいで未練ない部分もあるんだろうけどね。
今の奥さんと付き合うまでは微妙に自棄になり若干手が速かったりしたけれども付き合ってからは一途。つまらないことで怒ったりピーピー泣く女性にあって初めて自覚したS心。やばいまじ楽しいと初めて思いましたという。
奥さんは奥さんで優しいひとにぽーっとしたりすることもあるけれど自分にはちょっと困った旦那とだいぶ要カウンセリングな娘がまじ大事。
なんというか、仲良し夫婦。
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