6.胸
―――いつも思っていると、ある日聞かれた。
「…触っているとなにかいいことあるの?」
「…真顔で聞かれると悩むが、まあいいかと思う程度には気持ちいい」
「ならいいけど」
「けど?」
「あなたに色々やらせすぎるのも対等な関係というものを築くためにはどうかしら、というか。
わたしももむべきなのかしら、あなたのを」
「俺は嬉しくないから気にしないでくれ」
しまった。反射で答えた。よくよく考えてみると悪くない光景だというのに。むしろ嬉しい光景だというのに。しかし胸をもむと表現されるととても嫌だ。何かが嫌だ。
いちいち真顔だからだろうか。
確実にその時も真顔だからだろうか。
…照れられたら照れられたで、色々と複雑な気持ちになる気もするが。
「…それでも、不思議よね」
「なにが?」
「気持ちよさそうな顔してないし、楽しそうな顔してない。
見分ける自信が絶対にあるというわけじゃないけど…それでも、不思議」
「…不思議不思議と言われてもね」
柔らかい部分を触っていると落ち着く。気持ちいい。
やることやってる時に落ち着くのも変だが。落ち着く。
「嫌なら止めるし痛けりゃ気をつけるよ」
「それは大丈夫」
「ならいいじゃねぇか」
「ええ、貴方がいいのなら」
言葉だけ聞いていれば最高に甘いセリフに、漏れるのは苦笑。
こんな時でさえぼんやりとした目にこそ、落ち着かない気持ちになる。
…胸にそういう気持ちになった方が、健全かもしれないと。少しだけ悩むところだ。どうでもいいが。
「…別にんな色々考えてくれなくていいよ。好きにするから」
「…拓登は温和ね」
「……色々考えなくて良いっていっといてなんだが、そのあからさまに過去に温和じゃないのとやってた的な発言はやめてくれないか」
「気をつけるわ」
いや。気をつけるより否定してほしかったんだがな。被害妄想だっつーことにしたかったんだがな。
微妙に荒んだ心地で、膨らんだ部分に唇を寄せる。
そのまま耳を寄せれば、穏やかな鼓動。
自然と息をついて、少し瞼をとじた。
(彼が安眠する方法)