3.相手の私物

 空はぽかぽかいい天気で、カゴにいれた洗濯物からは、清潔な香りがする。
 気持ちの良い洗濯日和だ。
 テーブルクロスをピンと伸ばしながら、一人で頷く。
 私は地龍で、別に太陽の光が力になるとかそういうことはないけれど。ぽかぽかしているのは素直に気持ちがいい。
 雨が降るよりは、こちらの方が好きだな。
 パン、パン。
 皺を伸ばす作業と、干す作業。
 踏み台に上ってそれを繰り返すと、カゴの底が見えた。
 その底にあるのは、白いハンカチ。
 特別なデザインはなにもない、シンプルなもの。
 …私の好みじゃないけど、彼の好みではある。
 いつもふりふりしやがって、まともなもの作れねえのか!昔、そう叫ぶ彼に、あげたもの。
「……ちょっとほつれてきてるね」
 端の辺りが、ちょっと寄れているというか、だらしない感じ。
 …駄目だ。なんか、すごくうれしい。
 ああ、ちゃんと使ってくれているんだなあ、と嬉しくなる。
 後で縫いなおしておこう。ついでに、後一枚くらい縫おう。…普通のに見せかけておそろいのとか作ったら、驚くかな。うろたえそうだね。…うん、そうしよう。
 どんなのにしようかな、と考えていても、やっぱり嬉しい。
 嬉しいから、つい。浮かれた行動をとったと気付いたのは、ちょっと後。
 ハンカチの端に軽く口づけてから、ハッと我に返る。
「………」
 ちょっとさすがに恥ずかしい。
 いや、嬉しかったからって、これは…うん。いや、いつも色々してるけど。なんか、こういうのは、それとは違う恥ずかしさがあるっていうか……! いや、そんなことより。
 きょろきょろと見回して、ぱんとハンカチのシワを伸ばす。うん、誰も見ていないし、気付かれてない。なら黙っていれば大丈夫。これで終わりだしね。うん。
 熱くなった頬をそっと押さえて、庭を去る足取りは、たぶんそそくさ、って感じだったと思う。



(…思ったより恥ずかしい。)



○IN庭の影。
「…………」(言葉にならない思いで赤面中)
「…メー君…。ここで鼻血とかふいたら絶交する…」
「ふ、ふかねえよ! お前じゃあるまいし!」
「私がいつ吹いたのさ!?」
「なんか『…萌えるやばい』とか言って鼻抑えるじゃん…」
「…ふ。ふふふふふふ。ふ。つまり今君は自分の感じる感情を『萌え』だと認めたな! はははは! バカップルめ!」
「く、ゆ、指差すなよばーか! かなたの馬鹿野郎!」
「な、なにさ! 私が馬鹿なら君はへたれよ、やーい、へたれー!」


(実は見ていた色々台無し主従)



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