激しい攻防戦の末、腕輪を取られて雅が敗北。
意外な人物の敗北に、遥霞側は驚くばかりだった。
「まさか雅が負けるなんて・・・・」
「別に弱いってわけじゃないのにな。」
「「雅大丈夫!!???」」
同時に同じことをいって、睨み合う流と白蓮。
「大丈夫だから・・・・・これ以上俺の体力と精神力を削るような事はしないでくれ・・・・」
雅は疲れたように、希羅の隣に座る。
「ほんとに大丈夫なの?痣だらけよ、あんた。」
「大丈夫だって。それより次希羅だろ?自分の心配したほうが・・・・・」
「ええ、そうね。未知の敵と戦う事ほど警戒しなきゃいけないことなんてないもの。」
希羅は静かに立ち上がり、前に出て行った。
「智華・・・・もし俺が死んだら後を追ってくれるよね。」
「そんな大袈裟な・・・・いいから早く行ってきてください。」
遥霞は智華のあっさりとした言葉に見送られ、前へと出て行った。
希羅のくじには『マリシエル』、遥霞のくじには『桜木聖那』の名が書かれていた。
お互いに檻の中に入る。
「それではスタートv」
聖那の声と同時に、それぞれ武器を構え、対峙する。
「トップ対決か・・・・」
竜臣がつぶやく。
「あ、遥霞いきなり発砲してる。」
慶が言ったように、遥霞は銃を乱射している。
しかし適確に、聖那の足の2・3cm横を撃ち抜いていた。
「凄いコントロールだな。」
雅の言葉に流は頷く。
「でも、あっちの人も負けてないみたいだけど?」
聖那は遥霞に発砲されても、一歩も動かなかった。
「いきなり発砲するなんて。けっこう容赦ないのねv」
「わかってる割に見抜いてるんじゃないの?一歩も動かないで。次は狙うよ。」
遥霞は再び聖那に銃口を向ける。
「そんな物騒なもの向けちゃ嫌よv」
聖那は手につけているグローブから糸を出すと、それを巧みに操り、檻の中に張り巡らせた。
「何のマネ?」
「後でわかるわよv」
遥霞は構わずに銃を撃つ。
しかし、弾は聖那の前で2つに分かれ、聖那の両脇に落ちた。
「!そういうことか・・・」
「こんな事もできるのよ?」
聖那が微笑むと、遥霞の周りにあった糸が遥霞の体を束縛した。
腕も縛られた遥霞は銃を床に落とした。
「!!」
「これでジ・エンドv」
「お手柔らかにv」
緊張した顔の希羅に向かってマリシエルはあどけない笑顔を見せる。
掛けられた言葉には反応せずに、希羅は刀を構える。
「お姉ちゃん感じ悪いねー。あまり怖い顔してると紫音みたいになっちゃうよ?」
「うるさい!!!」
マリシエルの発言に、外野の紫音が怒鳴り声を上げる。
「あーゆう風にねv」
「それは御免被りたいところだわ。」
相手のペースに飲まれないように、落ち着いて言葉を紡ぐ。
不意に、マリシエルの姿が消えた。
マリシエルは希羅の右に回っていた。
右手にはナイフが握られている。
希羅は繰り出された刃を避け、峰打ちでマリシエルを気絶させようとした。
しかしマリシエルは希羅の刀を避け、手に持っていたナイフを希羅の顔面めがけて投げた。
希羅はナイフを刀で弾くと、マリシエルを目で追った。
小柄で小回りが利くのか、なかなか速い身のこなしだった。
希羅は捕らえるのが困難だと判断して、刀を構えるのを止めた。
「?お姉ちゃん諦めたの?」
「そうね。あなたのスピードは捕らえづらいから。」
「ふーん。つまんない。」
そして、マリシエルも動くのを止める。
「腕輪を渡したいんだけど。」
ガッ!!!
腕輪を取ろうとした聖那の手を、遥霞は唯一自由の利く足で蹴り上げた。
「・・・・・足も縛っておくべきだったかしら?」
「もう遅いよ。糸は切ったから。」
遥霞は袖に仕込んでいたナイフで糸を切り、いつのまにか束縛を解いていた。
「それと、腕輪はもらったから。」
遥霞は左手に持っている物を掲げる。
それは聖那の右手につけられていた腕輪だった。
「いつの間に・・・」
「これで俺の勝ちだね。」
遥霞はクスリと笑うと、静かに檻の中から出た。
「あぁ――――!!!お姉ちゃんずるい!!」
隣からはマリシエルの抗議の声が聞こえる。
「うそも方便ってね。」
希羅の手にはマリシエルの腕輪が握られていた。
腕輪を渡したいといった希羅がマリシエルに近づき、マリシエルが手を出した時すばやく腕輪を奪ったのだ。
「あーあ、終わっちゃったわねえ。」
マリシエルが負けた事を確認すると聖那はため息をつく。
「結局勝ったのは俺と下っ端だけか・・・・」
玲人が呟く。
「でも大丈夫よ、玲人。パーティーはこれからだもの。」
戻ってきた聖那が妖しげな笑みを浮かべる。
「BLACK MISTのみなさーん。確かそちらで負けたのは芹野さんと雅ちゃんだったわね?
負けたお2人には今晩こちらに泊まっていただきますvv」
「「「「「「「「はぁ!!??」」」」」」」」
全員が、声をあげた。
「聞いてねーぞ、そんなこと!!」
半ば焦りながらそう叫ぶのは雅。
「だってこれは私たちが開いたパーティー。私たちがルールだもの。何か文句あるかしら?」
聖那は有無を言わせぬ口調で言う。
「「雅が泊まるんだったら俺(僕)も泊まる!!!!」」
流と白蓮、2つの声が同時に響いた。
「どうぞどうぞvv人数は多いほうが楽しいしね。」
聖那はうれしそうに頷く。
「私も泊まるわ。この2人と雅を一緒にすると危険だから。」
希羅も声をあげる。
「もちろん、竜臣と慶もよ。」
「何でだよ!!??」
「俺はもの食えればそれでいいんだけど・・・・」
「何?文句あんの?」
希羅に言いくるめられた2人も泊まる事に決定。
遥霞も智華が泊まるなら俺も泊まる。と豪語。
結局全員で泊まる事になった。
「おもしろい人達ねぇvv」
「暑苦しいなぁ・・・・特に一部3人・・・・・」
「あいつら・・・・泊まるのか?」
「人いっぱいだねー。」
各々の考えを持ちながらも、食事会を開催。
食事を堪能(特に慶)した後、聖那の提案でなぜか全員で風呂に入ることになった。
「ここには露天風呂があるのvv」
後ろにメンバーを引き連れながら、聖那が案内する。
「男湯はあっち。お互い仲良くねv」
仲良くできるわけがないとわかっていながらも、わざと男達に告げる。
――――女湯
「今日は楽しかったわねぇv紫音。」
「私は楽しくない・・・・」
「紫音負けたから拗ねてるんだ―。」
温泉に浸かりながら楽しい(?)会話をする3人。
「雅ちゃん達どうしたの?早く入らないと風邪引いちゃうわよ。」
今だ入ることを躊躇っている雅達に聖那が声を掛ける。
「いや・・・・・なんでこんな状況になっているのかよくわからないんだが・・・?」
「まあまあv細かいことは気にせずに。」
「うわっ!!??」
聖那が雅の腕を引き、雅は大きな音を立てて温泉に落ちる。
「あらあら。」
「いって―・・・・・傷にしみる・・・・・」
「風呂ではしゃぐなよ・・・・・・」
お湯をモロに被った紫音が、呆れたように呟く。
「芹野さん達も入ったら?」
聖那の笑顔を見て、逃げられないと悟った2人は静かに温泉に入る。
「それにしても・・・・・男湯のほうやけに静かだね―・・・・・」
壁の向こうにある男湯のほうを見ながら、マリシエルが言う。
「竜臣と慶、死ななきゃいいけど・・・」
希羅がため息混じりに呟く。
――――男湯
「なあ、竜臣・・・・・」
「何だ。」
「温泉浸かってるはずなのに・・・・なんか寒くねーか?」
がたがたと震えながら、慶は竜臣に訴える。
「それは間違いなく勘違いじゃないな。」
竜臣はちらりと隣の集団に目をやりながら答える。
隣の集団―――遥霞と流と白蓮と玲人―――は、笑顔で温泉に浸かっている。
笑顔のはずなのに、ぎすぎすとした空気が流れている。
そのおかげで、2人は温泉に浸かっている気がしなかった。
「火影君はさ・・・・・」
おもむろに、玲人が口を開いた。
「どうしてあのお嬢さんにそこまで執着するのかな?」
「君に教える義理はないと思うけど?」
流は笑顔で答える。
水温がまた下がったようだ。
『それにしても雅ちゃんってばけっこういい体してるのね〜v』
『なっ・・・ちょっ・・・!!!』
『男みたいな格好するのはもったいないわよ?せっかくいい体なのに。』
壁の向こうから、聖那と雅の声が聞こえてきた。
流と白蓮の耳がピクリと動く。
『ちょっとだけ触らせてvv』
『なっ、何を!!???ちょっ、やめろって!!!!///』
雅の声を聞いた途端、流が急に立ち上がる。
「りゅ、流・・・・・・?」
竜臣の声にも反応せず、流は壁のほうへと歩いていく。
そして、壁をよじ登り始めた。
流の行動に呆然とする竜臣と慶。
さらに、流に続くように遥霞も壁を登り始めた。
「あーもう・・・・なんなんだよあいつらはぁ・・・・・」
「スケベ心丸出しだな・・・・」
2人の行動に竜臣は頭を抱え、慶は正直な感想を述べた。
「流は雅、遥霞さんは智華さん狙いだろうけどねー。」
くすくすと笑いながら白蓮が言う。
「白蓮・・・・・お前は犯罪に走らないんだな・・・・」
白蓮も雅に執着してるだけあって2人のような行動を取らないか心配だったが、
どうやら今回は大人しくしているようだったので竜臣は涙を流す勢いだ。
「だって僕はいつでも雅とお風呂に入れるもん♪」
「ははは。前言撤回。」
「それ、爽やかにいう言葉じゃないと思うけどなぁ・・・・」
竜臣の妙に爽やかなセリフに、珍しく慶がツッコム。
――――変な奴等だなぁ。
玲人は心の中で思った。
自分も変だという事には気づかずに。
流と遥霞は後もう少しで壁を越えられるというところまで来ていた。
2人がそっと壁から顔を出すと、目の前には銃口があった。
「「え?」」
「あの世で仲良くねvv」
マリシエルは超至近距離で2人に発砲した。
ガウンッ!!ガウンッ!!
「銃声・・・・?」
竜臣はもしやと思い、銃声がしたほうを見てみる。
そこには、血まみれになった男2人が温泉に浮かんでいた。
温泉のお湯は紅く染まっている。
まるで血の池地獄だ。
「あーあ・・・・」
「死んだな、ありゃ・・・」
「バカな人たちだねぇ。」
やれやれと、玲人は肩を竦める。
「あれ?白蓮は?」
いつのまにか、白蓮の姿が消えていた。
「女の人に・・・・触られた・・・・・」
肩で息をしながら、雅は途切れ途切れに声を出す。
「そこまで必死に逃げなくても・・・・・」
存分に雅の体を触った聖那はうれしそうに笑う。
「そういえば、何で私達の服のサイズわかったのかしら?」
希羅が、ふと思い出す。
「そんなの簡単よ。下着と写真さえあれば。」
「なっ!!??」
「いつ!!???」
希羅と雅が、聖那の言葉に過剰に反応する。
「大丈夫よ。サイズを見た後返しておいたから。」
「そういう問題じゃないんじゃ・・・」
聖那のあっさりとした返答に、紫音が思ったことを呟く。
「それより、遥霞と流君の賞品の丸秘写真の内容ってなんなんですか?」
智華が、昨日から気になっていた事を聖那に問う。
丸秘というのだから、それなりに凄い内容なのだろう。
「それは秘密よv丸秘だもの。」
ウインクをしながら聖那は言う。
「・・・・そうですか。」
それだけ言うと、智華は温泉から上がる。
「あら、もう上がっちゃうの?」
「はい。あまり長く浸かると、のぼせてしまうので。」
智華は上にまとめた髪を揺らしながら、温泉から出て行った。
「雅〜〜vv抱っこしてvvv」
智華と入れ替わりで入るように、白蓮が子供の姿で雅のもとへ走ってきた。
「白蓮!!ここは女湯・・・・」
「ああ、言い忘れてたわ。これが白蓮君の賞品だから。」
「は?」
聖那の言葉に、雅は間の抜けた声を出す。
「雅ちゃんと2人っきりでお風呂に入ること。それが賞品。さ、みんなあっちへ行きましょう。」
聖那は雅以外の全員を引き連れて、離れた所にあるもう1つの温泉へと向かった。
「・・・・・」
「雅、抱っこvv」
後には呆然と立ち尽くしている雅と、妙に張り切っている白蓮だけが残された。
「やっぱり雅の腕の中は落ち着くなぁ〜〜〜vvv」
満足げに、雅の腕の中でくつろぐ白蓮。
「後から流に何か言われても俺は知らないぞ・・・」
どこか遠い目をしながら、雅は呟く。
「大丈夫だって。・・・・雅、僕のこと知りたい?」
自分より背の高い雅の顔を見上げながら、白蓮は言う。
「は?なんだよ、突然。」
「何で僕が雅のとこに現れたのとか。そういうの。」
「んー・・・まあ、一応は。別に話したくなければいいけど。」
確かに、気になっていないことではなかった。
自分は妖精とか見たことないし、妖精に忠誠誓われるような事をした覚えもない。
ちょっとだけ、気になった。
「僕さ、元は普通の人間だったんだよね。でも、事故に遭って死にかけて・・・・気づいたらこの姿だった。
それからはなんか色々と実験みたいなのされて・・・・それで研究所逃げ出したんだ。」
白蓮が静かに語る。
雅は驚いた。
人体実験をしている人間がいることに。
死にかけた人間の命を実験に使っていたことに。
「でも・・・・それと俺に何の関係が?」
「研究所を逃げ出した時、僕猫の姿でさ。どこに行けばいいかわからないし彷徨ってたら衰弱しちゃったんだ。
それで、道端に転がってた僕を拾ってくれたのが雅ってわけ。覚えてないかな?」
雅は記憶を掘り起こす。
――――そうだ。俺は一度だけ、猫を拾ったことがある。あれは確か・・・・12歳くらいのときか・・・・・・
「あの時の猫・・・・?」
「思い出してくれた?」
いつのまにか青年の姿になっていた白蓮が、雅の顔を覗き込みながら笑う。
「やっと・・・やっと見つけたんだ。僕の命を助けてくれた
「俺のことを?」
「そう。過去の事に囚われている雅を助けたい。」
金色に輝く瞳に強い意志を宿しながら、白蓮は雅の瞳をまっすぐ見つめる。
雅の胸がズキンと痛んだ。
確かに、自分は過去に囚われているかもしれない。
でも、本当に過去に囚われているのは・・・・・・
「でも、お前を助けたのは俺だけじゃない。流も看病してくれたし・・・」
「うん。わかってるよ。だから僕は、雅を救えば、流も助かるんじゃないかなって。そう思ったんだ。」
ふわりと、白蓮は優しい笑みを浮かべる。
「だから雅、笑って?昔みたいに、とても楽しいそうに。」
白蓮は雅の頬にそっと触れる。
雅が何か言おうと口を開こうとした時―――――
「この猫なのか人間なのか妖精なのかハッキリしないキザ野郎!!!気安く雅に触るな!!!!!!!」
バタ――ンッ!!!と、ドアを壊しそうな勢いで流が女湯に乱入してきた。
「流!!???」
「あちゃ―・・・バレちった。」
「この・・・・・今日という今日は許さん!!!!ケシ炭にしてやる!!!」
流が大量の炎を発生させながら白蓮に近づいてくる。
「流!!ちょっと待てって!!!」
「雅・・・・なんでこんな奴を庇うんだ・・・・・」
今度は悲しそうな顔をして床に崩れ落ちる流。
「まるで1人百面相ねぇ。」
「退屈しなさそうでいいな、あいつ。」
「紫音・・・それはちょっと違うと思うよ・・・・・」
「流!!!あんたは男でしょ!!!さっさと戻りなさい!!!」
「ああ、男さ!!それがどうした!!???」
「「開き直んな!!」」
「何でこう、どいつもこいつも・・・・・」
「竜臣、あんまり他人の事ばかりで悩んでるとはげるぞ?」
「緋月君の言うとおりだよ?」
「うるせぇ!!」
そうして、色々と騒ぎながらも夜は更けていき、パーティーはお開きということになった。
ちなみに、朝も一騒動あったことは言うまでもない。
んー・・・微妙。逝ってよし。