A person? A doll? An answer is in a heart・・・

「チッ・・・・・・」
流は小さく舌打ちする。
自分に攻撃を仕掛けてくる目の前の人物を睨みながら。
こんなはずではなかった。
いや、こうなる事はわかっていた・・・・・?
自分がこの道を選んだときからわかっていたこと・・・・・これは必然?
流は、相手の攻撃を避けながら思った。
必然だとしたら、自分がこいつの攻撃を避けているのはおかしいじゃないか。
流はふっと、自嘲するように微笑んだ。




「仕事?こんな大勢で?」
事務室に雅の声が響く。
事務室には雅の他に、遥霞、流、希羅、竜臣、慶、智華のいつものメンバーがいる。
仕事に行くのは遥霞と智華以外のメンバー。
こんな大人数での仕事は珍しかった。
「相手がけっこう大きな組織なんだ。組織っていってもただの不良の寄せ集めみたいなのだけどね。人数が多いから、全員に行ってもらう。」
遥霞が手元の資料に目を落としながら説明をする。
「で、仕事の内容は?」
「麻薬の奪回。こいつらがある研究所から開発中の麻薬のサンプルを盗み出した。そしてその研究所から奪回の依頼が来たってわけ。」
「麻薬・・・・・」
雅がポツリと呟いた。
流は、心配そうに雅を見つめていた。
「雅外れてもいいよ?また倒れたりしたら・・・・・」
「いや。大丈夫だ。こいつらがその麻薬を何に使うか知らねえが、もしばら撒かれたりしたら大変だからな。俺も行く。」
「そ。じゃぁこれがそいつらのアジトのビルの場所と見取り図。こいつらなりにこのビル改造してるみたいだから気を付けてね。」
そして5人は、いつものように上司の輝かしい笑顔に見送られ、仕事に向かった。
いつものように仕事を終わせばいい。
全員が、そう思っていた。


「・・・・・・ザコばっか・・・・・」
目の前の相手を斬り倒していきながら、希羅が呟いた。
「ホントに不良の寄せ集めみたいだな。」
銃を撃ちつつ、竜臣。
「じゃぁ分かれて敵減らしてくか?」
背後にいた敵に回し蹴りを食らわせながら、雅。
「その方が効率いいね。」
相手のみぞおちに拳を入れて、流。
「んじゃぁどっち行く?」
炎を撒き散らしながら、慶。
「!!皆避けろ!!!!」
雅が叫ぶと、頭上から巨大な岩が。
5人は各々背にしている方へ飛びのき、岩に潰される事を回避した。
しかし、部屋は岩によって2つに隔たれ、それぞれ上か地下に続いている階段を選ばざるを得なくなった。
「希羅・・・・大丈夫か?」
「ええ、怪我はないわ。私達は・・・・・どうやら地下のようね。」
部屋の隅にある下へと続く階段を見て希羅は言った。

「チッ・・・・・雅と離れ離れか。」
岩の向こうでは、流が小さく舌打ちをしていた。
「俺、生きて帰れんのかなぁ・・・・・・」
「大丈夫だって。お前は簡単に死なねーから。今までだって死ななかったわけだし。」
絶望的な未来に竜臣は涙し、慶はそれをあまりフォローになっていない言葉で慰める。
「俺達は上・・・・・手っ取り早く終わして雅と落ち合おうっと。」
流はそんな2人をほっといて1人、階段を上っていく。
「流待てって!!」
慶は、未だ泣いている竜臣を引きずって流の後を追った。


「・・・・・・全然敵いないな・・・・・」
「上はあんなにいたのに・・・・・・おかしいわね。」
地下を警戒しながら歩いていた雅と希羅は、人の気配がないことに不信感を抱いていた。
「罠か?」
「そうとも考えられるけど・・・・本当に人がいないのかもしれないわ。上に麻薬があるのかも。」
「じゃぁ1回引き返すか?上にあるとしたら上に人いっぱいいるんだろ?だったら3人手伝いに行ったほうが・・・・」
「クスクス・・・・」
「「!!!」」
急に聞こえた笑い声に、2人は刀を構え辺りを窺い見た。
すると、2人からは死角となって見えなかった所から1人の男が出てきた。
赤味掛かった茶色の短めの髪に同じ色の瞳。
優しささえも感じる中性的な顔の男だった。
「お前っ・・・・!!!?」
その男を見た瞬間、雅が目を見開く。
「久しぶり?俺は会いたくなかったけど。」
男は雅に微笑みかけながら言った。
「何?知り合い?」
希羅は眉を顰める。
なんとなくこの男が気に入らなかった。
「こいつは・・・・流の親友なんだ。輝っていって俺達が前住んでた所にいたんだけど・・・俺達がそこを離れてからはどうなったか知らない。何でここに・・・・・」
「どうなったか知らない?ずいぶん冷たいんだね。あんなに可愛がってあげたのに。」
輝は困ったような笑顔を浮かべながら雅に歩み寄る。
雅は一歩も動かないまま、輝を見つめていた。
「大きくなったね。昔より顔がちょっと女の子っぽくなったかな?体の発育は良かったのに顔は男っぽかったもんねぇ。流との仲はどこまで進んだの?」
輝は雅の顎に手を添え、上を向かせる。
「雅!!」
希羅は心配になって雅に声をかける。
それでも雅はその手を振り払いもせず、動かないままだった。
希羅は驚いていた。
ここまで男に触られても何も言わない雅は見た事がなかった。
「どこまでって・・・・・別に、ただの仕事のパートナーだよ。」
「ふ、ん・・・・仕事のパートナーねぇ。それで、その仕事とやらをする為に流を連れ出したわけ。」
「違う!!!これは俺達2人で決めたことだ!」
「クス・・・・・・」
輝は微笑し、
「そんなの信じるわけがないだろ?」
そう冷たく言い放つと、雅の腕を引き、自分の胸に抱き寄せ、耳元で囁いた。
「バイバイ、雅。」
「あっ・・・・・」
雅の体が小さく跳ねた。
輝が雅から離れると、雅は力なく崩れた。
「雅!!あんた一体・・・・・!!!??」
希羅は雅を抱きとめ、輝に刀を向ける。
しかし、そこに輝の姿はなかった。
「流が来たら流に伝えてよ。俺は奥の部屋にいるって。」
輝は希羅と雅がいる所からだいぶ離れた場所に立っていた。
「じゃぁね。」
輝はそう言い残すと、姿を消した。


「これで最後、っと・・・・・・」
どさっと音を立て、今倒した相手が床に転がる。
「けっこういたなー。100人くらい?」
「200人だよ。」
「流、数えてたのか・・・?」
何ともなく答える流に、どこにそんな余裕があったんだと疑問に思う竜臣。
「ところでどうする?どこにも麻薬なんてなかったぞ?」
「地下じゃないのか?希羅と雅が行ってる。」
「じゃぁ急いで下に行こうか。雅麻薬苦手だし。」
「でもどうやって?1階に行っても岩があって地下の階段には行けないぞ?」
「あのエレベーター直接地下に繋がってんじゃないかな?他の階にエレベーターなかったし。」
そして流は、何の迷いもなくエレベーターの下ボタンを押す。
ワイヤーの音が響き、エレベーターが上にあがってくる。
チンッという音を立てて、エレベーターが到着した事を告げる。
エレベーターの扉が開いた瞬間、流は微笑んだ。
「エレベーターボーイがいるv」
「「は?」」
竜臣と慶が素っ頓狂な声をあげた後、流曰くエレベーターボーイらしき敵は、前のめりになって倒れた。
「もう倒してるけどね。」


「なぁ、希羅の声しねーか?」
3人で地下を歩いて少し経った頃、慶が2人に告げた。
2人は耳を澄ませて慶の言葉の真意を確かめる。
地下なだけあって、相当静かな場所だった。
そして、微かに聞こえる呼びかける声。
「・・・・・び・・・・・雅・・・・!!!!」
確かに希羅の声で、雅の名を呼んでいた。
「雅に何かあったのか・・・?」
「あ、流!」
流はすでに、希羅の声がする方に走り出していた。


「雅!!!」
「流!雅が・・・・・・」
駆けつけた流に、希羅は泣きそうな声で叫ぶようにして話し掛ける。
「一体何が・・・・」
「雅が・・・・息してないの!!!心臓も動いてない!!!!」
希羅の言葉に、流の動きが止まった。
息をしていない・・・・・?心臓が動いていない・・・・・・?つまりそれは・・・

――――雅の死――――

「・・・れだ・・・・・」
「え?」
「誰だ!!雅を殺したやつは!!!!」
流は瞳に怒りを宿して叫んだ。
たった今ここにきた竜臣と慶は流の言葉に目を見開く。
「輝っていう・・・・雅が流の親友だって言ってた。それでそいつが、奥の部屋にいるって・・・・」
「輝・・・・・」
流はポツリと輝の名を呟くと、静かに、輝がいるであろう部屋に向かった。
「おい、希羅。雅がなんだって・・・・・?」
「雅、死んだのか?」
竜臣と慶が、信じられないといった様子で希羅に問う。
「雅・・・・・」
希羅は雅の体を強く抱きしめる。
雅の体はまだ体温が残っていて、とても死んでいるとは思えなかった。
「・・・・とにかく流を追うか。」
慶が雅を背負い、3人は流の後を追った。


「やぁ、流。待ちくたびれたよ。」
流が部屋に入ると、輝が笑顔で出迎えた。
しかし、流は無表情で、何もしゃべらなかった。
「相当怒ってるね?雅が死んだ事がそんなに悲しい?」
「輝・・・何が目的だ?」
「俺の質問は無視なわけ?目的・・・ねぇ。さぁ、なんでしょう?」

ドゴオォォォォォォッ!!!!

流の拳を輝は避け、流が殴ったコンクリートの床が大きく窪んだ。
宙にはコンクリートの破片が舞っている。
「なーんか怒りっぽくなった?カルシウム不足?」
クスクスと笑いながら輝は再び流に近づいていく。
「輝・・・・・いい加減にしろよ。いくら俺が雅と人を殺さない約束をしてるといっても、俺だってどうでもよくなる時があるんだ。」
流は冷たい目で輝を睨み据える。
その表情に輝は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑みを作った。
「その目・・・・・久しぶりに見るな。その目は最初、俺達を守る為に敵に向けられたものなのに。今は俺に向けるのか。」
「何を・・・・・」
「流、俺のものになれ。」
流の目の前で立ち止まって、輝は少し身長差があり、自分より上にある流の目をまっすぐ見ながら言った。
「俺のものになって、俺の為に生き、俺の為に死ね。昔のように。」
「断る。」
輝の言葉を、流ははっきり断った。
「お前はもう強くなった。昔みたいに俺の助けは要らない。1人で生きていける。」
流の言葉に、輝はさらに笑みを深くした。
「そう。じゃぁ、力ずくで俺のものになってもらうしかないね。」
その言葉の後からは、激しい攻防の繰り返しだった。
攻撃されれば避け、避ければ攻撃をする。
お互いに能力は使わなかった。
お互い相手の能力を知らない。
先に能力を使えば能力を分析されてしまう。
そう思い、どちらも能力は使わなかった。
しばらく攻防戦を続けた後、お互い距離をとった。
このまま続けていても、決着がつかないことは目に見えていた。
「相変わらず強いね。」
「お前だって、俺と互角だろ。」
「流!!そいつが雅を殺したのか!?」
そこへ、流の後を追ってきた3人が到着した。
慶の背中には雅が背おられている。
流は一度雅に目を向けると、すぐに輝に視線を戻した。
「手は出さないでくれ。これは俺の問題なんだ。俺が解決する。皆は麻薬探してて。」
「なっ・・・・こんな状況で麻薬なんて探せるわけねーだろ!!」
「じゃぁ黙って見ててよ。巻き込まれたくなかったら少し下がってて。ちょっと・・・・激しい戦いになりそうだからさ。」
そう言い、流は手に炎を発生させる。
懐から銃を取り出し、炎を手に握り、銃に弾を込めるような素振りをする。
そして銃口を輝に向けた。
「今、さっきのふざけた発言を撤回すれば撃たない。どうする、輝。これは俺が作った炎の弾丸。掠っただけでも傷口から炎が広がってくよ。」
そう言いつつ、流は中の安全装置を外す。
「撤回・・・・・するわけないでしょ?」
輝の言葉が終わると同時に流は銃を撃った。
しかし輝はそれを避け、弾は壁に当たった。
壁は一瞬で粉々になり、崩れた。
「うわー怖え〜・・・・そんなの使うなんてなしじゃない?」
「言っただろ。どうでもよくなる時があるって。」
流は再び、輝に銃口を向ける。
「ふーん・・・でもさ、まだよくわかんないな。」
輝は簡単に流の懐に入る。
輝のその動きに流は驚いた。
その隙をついて輝は流の手から銃を叩き落した。
「何でそこまで雅の為に必死になれるのか。」
「・・・・・・」
「昔はそこまでべったりじゃなかったよね?ましてや・・・・・人間じゃないやつなんかの為にさ。」
「!!」
「なっ!?」
「雅が人間じゃない!!??」
「でたらめ言ってんじゃねーぞ!!」
「外野は黙ってろよ。驚いてるみたいだね、流。俺も色々調べたんだよ?まさか雅が人間じゃないとは思わなかったけどね。流、お前は・・・・知ってたんだろ?この事。」
流は黙ったままだった。
しかし、輝は話を進めた。
「お前は全てわかってるんだろ?雅が人に造られた、いわば人形だという事。雅の父親の組織がお前の姉・・・・泪を殺した事。
 それなのになんで雅と一緒にいるんだ。憎くないのか?姉を殺されて。昔はあんなに憎悪に溢れていたのに。」
「確かに雅の父親の組織に泪は殺された。だけどそれは泪が腕のたつ薬師だから目をつけられただけで雅には関係ないし、雅は俺と一緒に戦ってくれた。それをどうやって憎むっていうんだ?それと雅は人形なんかじゃない。血も流れてるし、ちゃんと心がある。これのどこが人間じゃないって言うんだ!?」
流が口を開き、最初はやや小さめに、最後は叫ぶようにして言葉を紡いだ。
「人間とは違うところ・・・言ってやろうか?」
にやりと笑いながら、輝は言った。
「能力だよ。」
「能力なら俺にもある。」
「それは人為的につけたものだろ。でも雅は違う。雅は生まれた時からあの能力を持ってんだよ。ある研究所の爆破事故の事知ってるか?12年くらい前・・・・・雅が5歳くらい。ちょうど泪が雅を拾った時だろ?その研究所で雅は造られ、そして研究所をその能力で消し去った。人間じゃできない事だろ?」
「それが雅だという証拠は。」
「とぼけんのはやめろよ。この事も流は知ってんだろ?それに・・・・・それ以上言うなって顔してるよ?」
流の眉がピクリと動いた。
流が後ろにいる3人を窺い見てみると、やはり信じられないというような顔をしている。
雅にも言っていない事。
だから、誰にも知られたくはなかった。
できれば一生、自分の心の中に仕舞っておくつもりだった。
しかし、輝はそれを許さないらしい。
「それでも、雅と一緒にいるって言うの?」
「雅は・・・・・とても弱い子なんだ。1人では生きていけない。1人をとても怖がる子なんだ。雅と一緒にいて気づいた。雅は1人にしちゃいけない。」
「雅に感情なんてあるのかよ。人間に造られた人形だよ?」
「雅は人形じゃない。たとえ人間にはない能力を持って生まれたんだとしても、雅には感情が、心がある。雅は人間だ。」
「でも、雅は死んだんだよ?」
輝は静かに、流の背中に腕を回す。
「流・・・・・・なんで・・・・・なんでだよ・・・・・?昔はあんなに俺を・・・・俺達を守ってくれたのに・・・・」
「流!!!そいつから離れて!!!!!」
輝が何をしようとしているのか悟った希羅は、流に叫びかける。
「どうしたんだよ、希羅・・・・・でっ!!!??」
急に頭に激痛が走り、慶は苦痛の声を上げた。
「・・・俺のものになってもらうよ、流。」
輝は小さく呟き、能力を発動しようとした。

バッ!!!!

しかし、能力を発動する前に、何者かの手によって流から引き離された。
「!!」
「っ!?」
「俺は・・・・・死んでねえっ・・・・・!!」
雅が肩で荒い息をしながら、2人の胸を押して引き離していた。
雅は地面に膝をつき、苦しそうに息をする。
「雅!!どうして・・・・・」
「知る・・・か・・・ゼェッ・・・・ゼッ・・・輝に・・・聞け・・・・」
2人の視線が輝に行く。
輝は俯いていた。
「俺の能力は人を一定時間仮死状態にするもの。殺す事はできない。」
「何でそんな後からわかるようなことを・・・・」
「・・・・・試したかったんだよ。雅がいなくなれば、流が戻ってくるかどうか。でも、やっぱり無理だったみたいだね。」
溜息をつき、くるりと流と雅に背を向け、静かに輝は歩き出す。
「どちらにしろ・・・・助けられちゃったね、流。」
「バーカ。助けられたのはてめえの方だ。」
回復してきた雅は、半ば見下したように輝に言う。
「流はお前のこと殺す気だったぜ。俺が引き離さなかったらな。だろ?流。」
自分の体を支えてくれている流を見上げて問い掛ける。
「そりゃぁ雅を殺したわけだし?許せるわけないでしょ。」
「だから死んでねえって。大体俺が死ぬわけねーだろ?俺はお前が死ぬまで死なねえ。」
「嬉しいこと言ってくれるね、雅。」
「あー・・・・なーんか2人の世界に入っちまってるよ。」
「あれで自覚ないから迷惑よね・・・・・」
「なぁ、そろそろ帰んねえか?雅生き返ったし。腹減ったし。」
いつのまにか、2人の周りには3人が集まっていた。
「あ、悪いな慶。頭踏んずけちまって。」
先程、慶の頭を踏んで飛び出していったことを思い出した。
「あーいいよ別に。それより腹減った。」
「帰ったら何か作ってやるよ。」
「やーりぃっ!!!」
「じゃぁ今日は雅のおごりね。」
その賑やかな様子に、輝は唖然としていた。
さっきまで死んでたのに、それに対しての心配とかはないのだろうか?
それにしてもよくしゃべるやつらだ・・・・そんなことを思っていた。
ぼーっとしていたら、急に誰かに腕を引かれた。
「輝、麻薬の場所を教えてもらうよ。」
「流・・・・・」
そう、流達は仕事でここに来たのだ。
「・・・・・そこの壁の隠し扉の向こうにあるよ。」
「そ。何で、こんな事をしたんだ?」
「その麻薬は、あの研究所が作ってたものなんだ。」
「それで、それを盗めば町が助かると?」
「助かるとまでは思ってなかったさ。ただ、少し時間が欲しかったんだ。俺達がもっと力をつけるまで。そうすれば、町を助けられると思った。」
俺や流、雅が暮らしていた町。
小さいけれど、自分にとっては大切な故郷。
その町が、あの研究所の研究対象になっている限り、平和など訪れない。
「流、また裏切るのか。」
「・・・・・人は裏切り、裏切られ生きていくんだよ。」
「だからって、何で俺達を裏切ったんだ。」
「輝は、知らないようだから教えるけど、あの町に平和なんて一生訪れないよ。あの町は麻薬の実験の為だけに造られた町だから。あの町の人々の中に、老人はいないだろ?皆若い人達ばかり。新しい物に興味を示す年齢。あらかじめ麻薬に興味を示すように仕組まれてるんだよ、あの町は。」
自分がこの能力を得たと同時に手に入れた情報。
ここにいたら、必ず死ぬ。
だから、雅を連れて逃げ出した。
泪を殺した奴らを皆殺しにしてから・・・・・
「・・・・じゃぁ守るだけ無駄って事?」
「そこまでは言わないけど。でもずっとあそこにいれば間違いなく死ぬ。逃げ出す方が賢明だよ。」
「ふーん。そっか・・・・・」
故郷だと思ったところは故郷じゃなかった。
他人によって造られた故郷。
汚れた町。
そんな故郷だったら、捨ててもいいかな。
あっさり、そういう考えに行き着き、可笑しくなってきた。
流が町を出て行った気持ちが、わかる気がする。
「でも輝が能力を持ってるってことは・・・・行ったんだよね?研究所に。」
この能力も、あの研究所が研究している事。
それの実験対象にならなければ、能力を手に入れることはできない。
「行ったよ。町を守る力が欲しかったから。流、お前は泪の復讐をする為だろ?」
「まあね。それにしても・・・・お互いバカなもんだね。」
「そーだね。」
互いに、渇いた笑いを漏らす。
汚れた故郷を守る為だとか、復讐の為だとか、そんなことで自分の体を実験に差し出して。
バカとしか言いようがない。
「おい、輝。」
急に、雅が話し掛けた。
「さっき・・・・町出てってからどうなったか知らないって言ったけど・・・・・ホントは知ってたんだ。お前が研究所のやつらと1人で戦ってた事。でも俺・・・・・」
「あーいいよそんなこと。ホンット細かい事気にするんだから。そこら辺は女の子だよね。」
「そこが雅のかわいいとこでしょv」
「なっ・・・!!?」
――――ああ、なんか流が2人いるような気がする・・・・
そんなのやだな・・・・切実に、雅はそう思った。

「輝、お前これからどうするんだ?」
麻薬を無事奪還し、帰ろうとしていた時、雅が輝に問い掛けた。
「んー、そうだなぁ・・・・・雅と結婚でもしよ・・・」

パァンッ!!!

輝の横を、ものすごい速さで炎の弾丸が横切った。
「・・・・冗談だよ。俺だって命は惜しいよ。だから流、拳銃仕舞って。俺は違う町に行くよ。そこで町の人守ったりする。そこを俺の故郷にするよ。」
「そっか。」
「雅に手を出さないんだったらいいよ。」
流の言葉に輝は、あはは・・・・と苦笑する。
実は輝の初恋の相手は雅だったりするのだ。
「じゃーね、流。元気でね。」
「輝もね。たまには連絡しろよ。連絡先教えるから。」
流が投げた折り畳んである紙を、輝はうまくキャッチする。
「ん。じゃ、雅またな。流に襲われんなよー。」
「?ああ。別に殺されはしねーと思うけど・・・・・」
雅の言葉を聞いて輝は思わずずっこけた。
――――まだ知らなかったのか・・・・・!!!!
そう思いながら、輝は流達と別れた。



「なぁ、流。」
車を置いておいた所まで行く道中で、雅が呟くように流に話し掛けた。
「俺・・・・・ちゃんと人間らしく生きれてるかな。」
「!!雅・・・・なんでそのこと・・・・・・」
雅はあの時まだ目を覚ましていなかったはず。
「昔から知ってたんだ。4年位前にフロッピーが届いて・・・・それには俺の父親の手紙が保存されてた。それに全部書いてあったんだ。俺がどうやって生まれたのか、俺が一体何をしたのか・・・・・・流ならこの事知ってるかなって思ってたんだけど、怖くて聞けなかった。また、捨てられるんじゃないかと思った。だから、ずっと黙ってた。」
最後の方は、声が震えていた。
泣いてるな、と、流は思った。
やっぱり雅には誰かが・・・・自分がついていないとダメだ。
そう、改めて感じた。
「雅は人間だよ。誰がなんと言おうと。それに雅みたいな人間っぽい人間の方が珍しいと俺は思うよ。」
こんな世の中だから。
幸い、自分達の周りには優しい人達がいるけど。
今の世の中では、人の心を無くしている人のほうが多い。
それと比べれば、雅なんてよほど人間らしい。
流は雅の頭をくしゃくしゃと撫でながら言い聞かせた。
「流・・・・・俺、今すっげえ幸せだよ。・・・・ありがとな。」
最後の方は恥ずかしかったから小さめの声で、それでいてちゃんと相手に伝わるように告げてから、雅は前方にいる希羅達の方へ駆け出した。
――――たとえ人間じゃなくても、この世に生を受けて本当に幸せだよ。
    ありがとう・・・・・父さん。
「ありがとう・・・か。それは俺の方だよ、雅。」
雅がいなければ、自分は今でも罪を繰り返していただろう。
燃やす為返り血は浴びないが、どんどんと自分が汚れていっていただろう。
雅がいてくれて、本当によかった。
「希羅ー!!!」
希羅の名を呼び、勢いよく希羅に抱きついた。
「ちょっ!?なんなのよ一体!!?」
「希羅・・・俺、希羅の事・・・・皆の事大好きだからな!」
その発言に3人は固まった。
その様子に流は影で笑いをこらえていたりする。
今、なんと・・・・・?
「雅、大丈夫?仮死状態から目覚めたばかりだから疲れてるんじゃない?少し休んだ方がいいわよ?」 「失礼だな。俺は本心を言ったのに。」
「いや、まぁ、いいんだ、別に。お前の好きは友達としてだもんな・・・・・」
「竜臣、友達としてじゃなかったら殺されると思うぞ。」
半ば青ざめながら会話をする竜臣と慶。
2人にとって雅のこういう発言は命に関わるのだ。
「ま、そんなのわかってるわよ。雅、あんた今日は迷惑かけたんだからご飯奮発してくれるんでしょうね?」
「材料が安かったらな。」
「雅、それは奮発とは言わないのよ。」
「それぐらい見逃してくれたっていいだろ。うちには白蓮もいるんだからな。」
ぎゃーぎゃーと、今日の夕飯について口論を始める。
しかし、雅は終始笑顔だった。



ごめんな、流。
俺、もう一つだけお前に黙ってる事あるんだ。
・・・・・俺の体、あと1年しかもたねえんだ・・・・・

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