とおいとおい昔の話。
 この世に、たったひとつの神がいた。
 最初の神様は万能で全能。そのありあまる力を以て、混沌とした世界を整えた。
 ぐにゃぐにゃと不確かな大地を踏み固め、透き通る空を生み出し―――そこまでして、ふと気付く。
 己は全能で万能。たったひとつで完成された存在。だから目の前の混沌が許せずに、世界を安定させた。
 けれど神の歩く後。整えられた世界でいくつもの命が生まれた。
 それらはまた混沌を生み出し、まったく安定とは程遠い。
 己は万能にして全能。
 されどどうやら、手が足りない。

 気づいた神は、あまたの眷属を生み出した。
 己の分身を生み出した。

 それは万能であるはずだった。しかし。
 不完全な世界に触れた途端、その神とは違うものへと変質した。

 あるものは神に従い、あるものは逆らい。神の子たちもまた、混沌と騒ぐ。

 その様に、神は首をかしげる。ああ完璧はどこにあると。
 それがないのならば、やはり自分だけでよい。
 世界にあるのは、自分のみで。

 ――――そうして神は、遠く遠く。
 誰も見えぬ世界へと旅立った。

 残された眷属は、新しい神達は。思い思いに世を生きる。
 あるものは世界を良くするため、あるものは邪な思いの赴くままに。
 何万もの神のうち、あるものは思いついた。

 己の使命はこの世界をよくすること。
 しかし、この世界のほとんどの生き物は、己たちの声が聞こえない。

 それではまるで手が足りぬ。
 だから作ろう、似ているものを。
 世を良くするための眷属を。

 ―――そうして作られた、神のレプリカ。

 それを作った神は、それを『ヒト』と名付けた。