魔術について 第一回
成冶「相崎成冶とー」(めちゃくちゃやる気のない声)
舞華「神宮舞華のー」(同じくやる気のない声)
成冶「なんの因果か魔術講座―」
舞華「…いや本当なんで私があなたに教えを請わなきゃいけないの?」
成冶「まぁなんつーか…世の中ままならないよねぇ」
舞華「…もう、本当にね」
成冶「このままぐちぐちいっててもしょーもないからとっとと言うと。魔術つーのは自分…あるいは自然界にあるモノの中にある力を扱う技術の総称なんだよ」
舞華「まーそのくらいなら私だって習ったわよ」
成冶「魔術を使うためにいるのは魔力と呪文。魔力に関しては、自分の中にある力を使う場合と、水やら風やらのそこにあるものの力を引き出す場合があるねー。
自分の中の力を使うのは…そうだね、肉体強化とか治癒とか、そういうもの。自分の中の魔力そのものを攻撃魔術として使う場合もあるけど…疲れるんだよね、あれ。攻撃なら、周りのものを使った方が楽だろう? そういうのが、後者。自然の中にある精霊に訴え、その力を借りると言われているね。ま、それを引き出すのも自分の中の魔力使うから、魔力を遣う、って点では変わらないんだけど」
舞華「呪文覚えるのがまたしち面倒くさいのよねえ…」
成冶「あはは、まぁ、舞華ちゃんだしね」
舞華「なにがいいたいのよあんたは」
成冶「(さらりと無視して)呪文は呪言を組み合わせて術になるんだ。その時の組み合わせが呪式だね。魔術師を名乗るならそれを作れてこそ一人前。ちなみに、舞華ちゃんや兄貴が使う肉体強化やら治癒呪文やらは、士官学校やら肉体労働者やらの間でよくつかわれているものだね。このくらいなら呪式のまる暗記で使えるし、金で買える」
舞華「私の場合は、両親の遺品にあったもの、だけどね」
成冶「商業系の学校じゃあ、本来肉体強化は習わないはずだからねー…」
舞華「そう。魔術はあんまり習わないの。…だから、分からないんだけど。そもそも魔力って何よ」
成冶「…それはとっても難しい問題だねぇ」
舞華「そーなの?」
成冶「うん。今も議論が続いてる。オレ、そっち専門じゃないから疎いしね」
舞華「…そのわりにはいつも人を馬鹿にしてくれているような」
成冶「(再び無視して)まぁ、今一番有力な説は、人の生命力そのもの、って解釈だね。事実、魔力を暴走させれば身体やら心やらにボロが出るようになってるし。使いすぎればだるいし、それでも続ければ身体の機能可笑しくなる人もいるからね」
舞華「…へぇ。じゃあ成冶さんが嫌みな性格なのはその所為なのね」
成冶「あはは、オレのどこが嫌みなの?」
舞華「うふふ、心当たりがないの? 本気で? それはそれで哀れな人ね」
成冶「あはは」
舞華「うふふ」
成冶「…険悪になったところで第一回は終わろうか」
舞華「え? 続くの!?」
成冶「じゃあちゃきちゃき第二回行こうか。第二回は、魔物について。自然の中にたゆたうと言われる精霊と対をなす―――対立する存在と言われているね」
舞華「……」
成冶「…オレを睨んでも仕方ないだろう」
舞華「…そうね。ごめんなさい」
成冶「…まぁ。舞華ちゃんみたいなのは、結構いるけどね。魔物はヒトを襲うから」
舞華「なんでよ?」
成冶「…そういう生き物だから、としか言えないね。…だって、オレらだって生きるために色々動物食べるだろう? 単純に食物連鎖に組み込まれてるだけなんだよ」
舞華「……分かってるわよ!」
成冶「…人里やその付近に出てくるようなのは殆どは下級から中級でね。魔術を持って抵抗することができる。魔術師なら術を使い、不得手ならそれによって鍛えられた武器を使って。
けど、世の中には、本能以外のものでヒトを襲ったり、利用している魔物もいるね。報告例は、あんまりないけど」
舞華「…そーゆーのはこちらと意思疎通するために、人の言葉を使ったりもできるそーです」
成冶「人より魔術に通じ、理解しきれない術を使う彼らは、人に紛れて争いを起こすこともあるし、下級の魔物を従えることもある。目的は…まぁ、なんつーか…なんなんだろうねぇ」
舞華「だろうねぇ、って、あんた」
成冶「…一説によれば神世の時代に眠りについた魔王の帰還を望んでいるそーだけど。そもそも神も魔王も存在すると観測した人間がいないからな。そーゆーこと観測するのも、魔術師の仕事なんだよ」
舞華「そんなものいちいち考えてるって暇な人達よねぇ、魔術師って…(ぽそ)」
成冶「まぁ…分からなくとも、生きていけるし、魔術も使えるから、その辺は同意するかなー…。オレはその暇な辺りに給料もらってる立場だけど」
舞華「ふぅん、つまり成冶さんは暇人」
成冶「…その辺は第三回に続くよ」
成冶「前回聞き捨てならない暴言を聞いたけど。オレは暇ってほどじゃない。っていうか魔術師暇じゃない」(坐った目でにっこりと笑う)
舞華「…そうね、あなたわりといつも忙しそうだものね。…からかって悪かったわよ」
成冶「オレの研究テーマは『攻撃呪文とその生活への応用』だから、製薬だの医学だのよりはよっぽど暇だけどな。その内容の所為で、警軍とわりと癒着してる」
舞華「…ねぇ、警軍って、全てから独立した機関じゃなかったかしら」
成冶「癒着言うのは言葉が悪かったね。…協力要請が来るんだよ。わりと。気軽に。…魔術師協会というのは『その力大衆のためにあれ』と謳っているから。治安の維持にも協力しなきゃいけないわけ」
舞華「ふぅん。…そういえば、鈴も登録だけはしていたけど。いいの、そういうのは、協力しなくとも?」
成冶「うん、登録だけで済ます魔術師の方が多いよ。協会に所属、っていうと、即研究所入りみたいに聞こえる気持ちも分かるけどさ…、要は免許、いや、資格だな。それだけでも、協会の持っている土地やら施設やら使用する権利はもらえるから。…ま、会員費がかかるんだけどね」
舞華「へー…便利ね」
成冶「ちなみに登録は初等学校卒業以降に可能。所属するのには一応簡単なテストがあるけどね。本当簡単だし、あれ。使いたい施設やら物資が増えたなら、また試験があるんだよ。使えるかどうかを試すためと…それを悪用しないかどうかを見極める、精神鑑定。ああ、ちなみにこれは研究所の人間も定期的に受けてるよ。昇進試験って名前でね」
舞華「昇進?」
成冶「協会の研究所に勤める魔術師にはね、12から始まり1級に至るまでの試験があるんだよ。…ま、上にいけば出世できるかっていうと、違うけどね。あんまり急ぐと、睨まれるだけだし。…そもそも、最初の研究所入って2,3年は、学生の延長扱いだしね。雑用してる方が、多い」
舞華「ふぅん。…成冶さんは?」
成冶「残念ながら受けれるようになるのは勤めて3年以降だから、まだなんにも」
舞華「…成冶さん」
成冶「ん?」
舞華「本気で真剣に下っ端なのね…(純粋な善意から来る憐れみの眼差しっ)」
成冶「(いつか殴ろうこの女)」
成冶「…ちなみに、君、分からない分からない言ってるけど、魔力自体は人よりある方だよ?」
舞華「…そーいえば、鈴もそういうこと言って嘆いてたわね」
成冶「うん、ぶっちゃけそれなのに簡単なのしか覚えないの、もったいない」
舞華「…けど、攻撃魔術って。…ぜんっぜん分からないもの」
成冶「…まぁ、魔術は魔力があればいいってもんでもない。そのコントロールに向かない人間、っていうのもいるんだよねー…君とか兄貴とか」
舞華「そ、そんながっかりした目で見られても…教わった通りにやってもできないんだもの…!」
成冶「うん、基礎的な論理の先は、感覚的なものも入ってくるから…仕方ないんじゃないの? 君、術使ったは良いけど魔力暴走させて自滅とか、とってもありそうだし」
舞華「あんたどこまで人を…っ、じゃなくて…っ! ま、まぁ、もったいないとは自分でも思うわ。…っていうか、ロクに使いもしないのになんであるの? 別に鍛えちゃいないわよ?」
成冶「そもそも鍛えて増えるわけじゃないんだよ、魔力は」
舞華「そーなの?」
成冶「そう。鍛えられるのは、使いこなすための技術と論理だ。少ない魔力でも効率的に使いこなせば、名を残す魔術師になったりもするしな」
舞華「ふーん。…なんか鍛えたら増えそうなのにね」
成冶「君みたいなのが言うと軽く嫌みになるから、魔術師に言っちゃだめだよ…オレは君よりあるし優秀だし心広いから、そんな浅はかなこと言っても気にしないけど」
舞華「なんだろう…フォローしてくれてるのに、むかつく…」
成冶「魔力を増やすっていうのは、それだけ魔術師の悲願なんだよ。…法律整備されるまでそれを求めて生贄出す奴らだって、いたんだから。滅多なこと言うな」
舞華「いけ…!?」
成冶「ああ、嘆かわしいことに、近代以前の魔術には頻繁にあったんだよ。他にも、魔力高まると信じて近親者で配偶繰り返したり、な」
舞華「…それって、…優秀な親からは優秀な子供が生まれる、ってこと?」
成冶「…魔力が遺伝するのだという説は、認められていない。……本音で言えば、認めてないってとこだけどな。認めてしまったら…分かるだろう、いくら君でも」
舞華「……いくら君でも、が気に入らないけど。…分かったわよ」
成冶「中には今でもそれを信じ、一族で結束してる里もあるって話だけど…今はともかく関係ないって言いきられてるんだよ。事実、優秀な親からそーでもないのが生まれることも多い。その逆も、な。…オレだって、父親は、魔力殆どない口だったし」
舞華「…私、あなたの性格は常々悪いと思ってたけど…実はそうでもなかったのね」
成冶「…本当君は常々一言多いな…(溜息)」
舞華「で、今度は私のターンらしいわよ。退治屋について」
成冶「ふーん、わー。すごーい」(おざなりな拍手)
舞華「(いつか殴ろうこの男)…といっても、大したことはないけど。退治屋免許は15歳。中等学校卒業以降、ね。とるだけなら、わりと簡単なのよねー…」
成冶「まぁ、実施試験があるわけではないからな」
舞華「一応体力テストと簡単な模擬戦があるけど。実際に魔物と組み合うわけじゃ、ないのよね。主に法律に関する試験と精神鑑定を受けるの」
成冶「実際魔物とやりあって…なんてことがあったら君はとれないでいたかもしれないね」(にっこり)
舞華「…(鈴、話したわね、こいつに…!)…そうよ。…本気で志す人間には、少し不親切じゃないか、って声も出ているわ。…死ぬ人、多いから」
成冶「…とったらそこで終わり、ってわけじゃ、ないからね。犯罪者オンリーだけを相手にする退治屋もいるみたいだけど…やっぱり、稼げるのは魔物退治だし」
舞華「死ぬまで行かなくとも、怪我で駄目になる人も多い。…だから、退治屋一本!っていうのは推奨されてないわね。拓登さんみたいな形がいいと言えばいいのよ」
成冶「いや兄貴は一応喫茶店が本業のつもりでいるんだけど…まぁいいや。君は日雇い系のバイトとかけもちだっけ?」
舞華「ええ。…そういえば、あなた、…副業として持ってるんじゃなかったかしら。退治屋免許」
成冶「うん」
舞華「うん、って……前から気になってたけど、いいわけ?」
成冶「いいんだよ。研究所の献体やらなにやらを連れてくるのが目的だからね。…個人で依頼を受けたら、減給ものだけどね」
舞華「ふぅん。…話戻すと、私達みたいな民間の退治屋は、仕事を仲介してくれる機関経由で依頼を受けるのよね。それこそ警軍や魔術師協会から。
…個人からは…腕っ節が強いのが前提だから、荒事の仲介に呼ばれたりもする。護衛もよくある。…一種の便利屋になってるのよねぇ。あ、仲介機関はさまないで直に依頼、っていうのも、世の中にはあるけど。私達みたいなのはまだ新人だから、まずないわね。身内からとかはたまにあるけど」
成冶「わりと節操ないよね」
舞華「そう。…だから一年ごとに仕事ぶりを退治屋連盟に報告することが義務づけられてるわ。仕事の数が少なくとも資格剥奪、とはいかないけど。法律すれすれなものばっかり、とか、…手配犯を必要以上に殺めているとか、そういう人は、資格剥奪ね」
成冶「賞金首の生死については、警軍がわりと把握してるからね」
舞華「そう。それでもその辺かいくぐったり無視したりして、犯罪に走る人も、いるんだけど。…そんなこともあるから、半分犯罪者、みたいに見られることもあるのよねー…嘆かわしい」
成冶「少なくともうら若い女の子が君みたいにそこそこ大成、っていうのは珍しいよね」
舞華「文句でもあるわけ?」
成冶「まさか。いつまで続くかなぁ、と思ってるだけだよ」
舞華「…あんた本当嫌なこと言うわよね…!」
成冶「今のはどちらかと言えば善意で言ったけど…ま、とにもかくにもなにかと大変ってことだよね、お互い」
舞華「ちょっと待って、話終わってないのにまとめてるんじゃないわよ。…ああもうそーゆーすましたところが嫌いなのよあんたは!」
成冶「はいはい。オレも君のこと全っ然好きじゃないから安心してね―」
舞華「そーゆー問題じゃ…」
…以下、強制終了