「ねぇ、サンタさんはなんで煙突がなくとも入ってこれるの?」
妹夫婦の家へと迎えに行った愛娘は、私の顔を見るなりそう言った。
「…サンタ?」
「エントツから入ってくるって言うけど。エントツある家、見たことない」
こちらをじいっと見つめる目にあるのは、純粋な疑問の色。
そりゃサンタなんていないからよと答えるのはとても簡単だし、早々に真実を知っても別に構わないのではないかと思う。
けれど、しかし。
…サンタを信じてる娘はちょっとだけ可愛い。
言う言葉を探す間にも、舞華は続ける。
「みんな言ってたの。ともだちもいってたしー葉も言った!」
そこまで話してサンタについての疑問がでないって。今の子はわりと素直なのね。けど、4つなんて、そんなものか。
葉―――この子の従兄はこの子の二つ上だし、そろそろ悟っていそうだけれども。空気を読んだのかもしれない。そういとこ、妹と似てるのよね。
「ねぇ、かーさん、どーして?」
なんて思っていると、再度尋ねられた。
昔の自分とよく似た面立ち。それなのに、愛らしく思えるのはなぜだろう。
ああ親バカになるのは優哉だけだと思っていたのに。私も彼を馬鹿にはできない。
馬鹿にできないっていうより、子供の相手はあっちの方がうまいわよねえ。自分が子供みたいな性格してるからなんでしょうねえ。
そう、だから。
彼ならどういうだろうかと言うことを、少しだけ考えた。
「…舞華」
浮かんだ答えに、私は少しだけ笑ってみる。
娘と繋いでいない方の手をそっと小さな頭に添えて、あくまで自信ありげに。
「それはね、愛よ」
「あいー?」
娘は不思議そうに首をかしげる。私も言ってて首を傾げたい。けど、もう傾げられない。
「サンタが子供を愛する気持ちがそこに煙突を作るの。プレゼントを届けたい根性ね。愛は大抵のことを可能とするの」
「さんたってすごいんだねえー」
疑うことなく娘が笑う。明るく、嬉しそうに。
その顔は、私にとっても嬉しいものなのに。
「………」
なんか、大事なものを売り払った気がするわね。
言えない言葉は、そっと冷えた空気へとけた。
葉と書いてヨウと読みます舞華の従兄は。ちなみに、今の舞華が物事を気合とかノリとかカンとかで乗り越えようとするのは両親に似た所為です。精神論親子。