毎度おなじみお試しダンジョン。その一室でワイルドウルフを斬る。
それが倒れたのを確認して、自分の手をわきわき。
これは、もしや。そろそろ。
浮足立ってどうしよもなかったので、とっととダンジョンを出て。で、役所に確認した結果!
「ひゃっほーレベル50だぜえええええええ! ひゃっはー!」
「嬉しいのはわかるけど変な踊り踊るなよ、恥ずかしいだろうが」
そうか。恥ずかしいのか。ならばと嫌そうに言うメーの肩をばしんばしん叩いてみた。
酔っ払いをみるかのような目でみられたが、幸せは幸せだ。
ろくにん暮らし その7
メー君と一緒に帰宅して、とりあえずは拭き掃除している緋那に報告。
濡れた雑巾をぎゅっと絞って、彼女は大きく頷いた。
「…そうか。ついにか。めでたいな」
…なんだろう。緋那が母の眼差しだ。
彼女にとって私ってどんな存在なんだろう。怖くて聞けない。
「…えっと、でさ。だからね。今日の晩御飯はどっかで食べよう…?」
「なんで疑問形なんだ。お前がそう決めたのに文句は言わない」
最近家計も安定しているし、とか言い出す彼女はやっぱりおかんだ。
なにが彼女をこうしてしまったんだろう。
私の態度が原因な気がします。反省しました。
「ハイテンションにただいま言ったと思ったら、なにをしなべてるの。マスター」
自室からリビングに降りてきたらしい磨智が、こくんと首を傾げる。
「…自分の生活態度を見直してた」
「うんそりゃあ見直した方がいいだろうけど…じゃあ、ハイテンションなただいまは?」
「こいつ、ついにレベル50なったんだよ」
いまだにちょっとしょんぼりしている私の代わり、答えるのはメー君。
ぞんざいな、それでもちょっぴり優しい気がする声色に、ほんのり嬉しくなった。回復した。
「わあ。なんだ、ちゃんとおめでたいことだったんだね」
「え、何その含みのある言い方!?」
「え、そう聞こえた? ごめんなさい。
ただ、マスターたまによくわからないことで喜んでるから、またそれかなって思っちゃって…
でも今回はとってもおめでたいね。おめでとう、マスター」
にっこり。
笑顔で告げる磨智ちゃんはかわいい。女の子は笑顔が一番だ。自分も見習う…かどうかは別問題だけど。
「こちらこそありがとう…みんなの協力あってこそだよ…!」
なんとなく潤んできた目頭抑えて、頭を下げる。
大げさだなあ、とつぶやく彼女は、でも、と続ける。
「蘇生は大変だったね」
「回数も多かったからな…」
「服も何着か駄目になったしな」
あ。刺さった。言葉が刺さった。痛い。
でも平気、最高レベルだから。強い子ですうん。
「大変だったなあ…」
「ああ。大変だった」
「重かったしねぇ…」
上から、遠い目をしたメー、似たような緋那。最後に磨智。
最後に、磨智。
彼女のことをじっと見てみる。私と3,4pくらいしか違わない身長。
全体的にすらーっとしてでもほっぺとかがいかにも柔らかげでこう、健康的にスリムさん。
……
ひざから崩れ落ちるよ。
「い、いきなりなんだかなた! 足どうかしたか!」
「メーには決して分らぬ問題だよほっとけや!」
「心配しただけなのに切れられた!?」
「…! マスターごめん、私無神経だった!」
なんかショック受けてるメーをほっとき、磨智が焦った声を上げる。
珍しいリアクションである。特に嬉しくはない。
「ごめん、ごめん。深い意味なんてなかったの。マスターは重くないよ!」
「いいんだ…優しい嘘は…誰もすくわな…っ!」
「ううん、私が悪かった。同性に言っちゃダメな言葉だった。無神経だった」
とっても真摯な目をされても、なんていうか。なんていうかさあ!
「…いいよ…事実だもん…」
「重いって言っても体重じゃなくてね? ぐったりぐっしょりしてるから、気が重いって話なの。しんどいほどアレなんてことは、ないんだよ!?」
「ふ。うふふふふ。へへ。けけ。きょきょ。磨智ちゃんは優しいねえ…」
「マスターしっかり! 違う、ごめん! 本当にごめん! えーと…ほら、ケーキ! ケーキとかお祝いに買ってくるけど、マスター何味がいい!?」
「…甘いモノ食べても、いいの? 私、重いのに…許されるの?」
「うん! みんなで食べた方がおいしいでしょう!」
ああ。ならチョコがいいな。風矢君が最近色々作って分けてくれるけど、混ぜものは難しいのでちょっととかいうし。
でも朱音さんところのカステラもいいな。
…うん、元気になった。
どうにか立ち直り立ち上がる私に、メーが心底アホを見る目をよこしていた。
言いかえせない。
言いかえせないけど、君はもっと人の地雷ワードとかに気を配って生きるべきだと思うよ!
なんとなく睨んでみると、戸惑った顔をされましたとさ!