私のたどり着いたこの町には、いくつも名称があった。
「桃源郷」「蓬莱」「シャングリラ」「アヴァロン」
そして、朝の生まれた場所。
ああまるで嘘みたい。まるで本当に、夜明けみたい。
まぶしくて目がくらんで、ぐずぐずと泣きたくなる。
けれどもそんなことをしているのが惜しくなったのは、いつからだろう、なんて。考えるまでもないのだろう。
幕間
龍屋で赤い龍にあった。
ふかふかと可愛い彼女は、こちらを見て少しだけ笑った気がした。
後日、それは勘違いなんじゃないか私まったく知らないし。なんていわれることになるのだけれども。
あの時嬉しかったのは勘違いじゃないので、私は気にしていない。
ああうん。
誰かに笑いかけられて嬉しいとか、ずーっと忘れてた気持ちだね、本当に。
かろんと鉛筆をころがして、くすくす笑う。
自分の笑顔は見ても別に嬉しくないが、まあ笑う門には福来るというではないか。
福、きたしさ。本当に。笑ってると。
鉛筆がころがったノートを眺める。
ここに来てから書き始めた日記の中身は、にぎやかで、楽しくて。
…そうだな、メー君がいるから、もう寂しくもない、ような気がする。なんとなく自信はないけれど。
つーかあいつの行動本当おもしろおかしいな。エッセイにして公開しようかな。そういうことをできるスペースが、冒険者は借りれるから。今までは私のいろんな釣果(拾い果)についてだったけど、それよりおもしろそうだ。ついでに広告とかも出したいな。お金はとらないで、純粋に交流で。収入あると面倒なことも増えそうだし。うん、いい感じ。
そのことを告げると嫌な顔したり騒いだりつっこんだり大忙しだろうメーを想像すると、また笑える。
明日に楽しみがあるというのは、よいことだ。
窓の向こうを見ると、綺麗な朝焼け。
さすがは朝の生まれた場所なだけある。雨も曇りも嵐もあるけれど。
うん、今日も頑張ろう。さしあたっては、朝ごはん。
ことことと鍋のなく声を聞きながら、私は足を動かした。