発端は笑顔のapp18と歩いてたこと

「漏れ聞こえた会話を元に話し合いの結果、あんたがデート商法にひっかかり、それを元警察に相談して、ダメだったからヤクザに相談したつーこととしか思えないんですが、大丈夫なのかあんた」
「どこから訂正したらいいのかわかりません」
「いや、俺は違うと思うんです。
デート商法にひっかかったのは知り合いで、あんたがそれにきれて、だましかえそうとしてデート商法に会ったはいいものの身の上話でもされて流されて、その結果ヤクザに相談でもしちまったのかと…!多少おとなしげなやくざといかにもなヤクザに…!」
「どうあがいても(ルカさんは)デート商法で、騙された私が頼るのは(たぶん鈴木さんが)やくざなんですね…?」
「いや、俺は信じてますよ?あれは迷子の外人道案内してたんだろうって…でもその…元刑事がどうのこうのと聞こえてしまい…!どこの誰に喧嘩売ったんですか、やくざに仲介頼むくらいならあんたのじぃさんに頼めよ!」
「売ってません。うちの祖父を、というかあなた方の師匠をなんだと思ってるんですか」
「「「アホだと思ってる」」」
「正直孫から見てもそうですが。えー…順を追って説明します。
とりあえずデート商法してそうな外国の人は金髪ですね? じゃあ友人です。確かにいくらでもひっかけられそうですが、デート商法はしてないでしょ。女性に優しいです。
あなた方が元警官だのヤクザだの言ってるのは…探偵の人です。冗談のセンスが小学生以下のただの友人です。
…あなた方が執拗にやくざいってる人の職は…あえて聞いていません。…一つ恩義がありますし、友人の探偵の友人ですし…、…女子供には基本的に無害そうですし」
「あんただからそういうところですよ?」
「職で人は…はかれませんし」
「え、いやまあ、そうかもしれませんが?」
「…私は今日こんな話しに来た訳じゃありません。
今月誕生日二人いるでしょ。いい肉買ってきたから鉄板出してきてください」
「師範、ついてきます!」
「師範にはなりませんよ!?」

みたいなことを言われそうだよなとふとおもって。

男っけのオの字もない女がなんか子供つれてきたら周りポカーンとすると思うよ。(なお友人の一人に大変似ている模様)

「…いや本当、なんなんですかね。あの子」
「似てますよね」
「似てるってレベルじゃないよなぁ」
「けど師範の腹膨れた時期ないでしょ」
「あの子一応師範じゃないよ、…まあ、母親ではないんだろうなぁ」
「…いや、それで引き取りますかね?」
「あの子ならやりかねねーだろ」
「…あ、うん。はい。そっすね…」

「……あの師範…じゃなくてお嬢さんと仲いいきれいな人いるじゃないですか。あの人とあの金髪すげー仲良さそうだったけど、その人との子だったりは?」
「あー…ねーだろ、…そっか。お前その辺知らないのか。篠、いや三鷹さん結婚してるんだよ、お前が来る前な」
「え、それはあの金髪じゃないんですよね?」
「めっちゃ日本人。…で、あの子5歳くらいに見えるから色々と合わない。三鷹さんと旦那の子だとするとな。……さらに、だ。単純に考え5、6年前そういうことして篠塚さんが生んでたとするよ? それをなぜかうちのお嬢さんが引き取ったとするよ?」
「はぁ」
「その場合例えどんな事情あってもあの金髪と普通に話してるお嬢さんはありえねぇわ…」
「まあ…ボコるでしょうね…金髪を」
「ボコるんですか…?」
「俺たちが『篠塚さんの連絡先教えてください』って言っただけできれるんだぞあの女は」
「『直接聞けよ』って切れるんだよな」
「え」
「直接聞いたらあしらわれてなぁ…。お嬢さんを介せばマシかと思って聞いたらボコボコにされたなあ…。試合形式だけど」
「『断られたなら諦めるかきちんと本人を口説くかしなさい』でしたっけか。で、孫に負けるとは情けないと師匠に死ぬほどどつかれるまでがセット販売だ…」
「自分に……。……つーか、篠塚さんが断りづらいところに頼むのが本当気に入らなかったらしくなぁ」
「えー……。…なんっすかそれ。それ。嫉妬的なあれですか? 師範とあの人めちゃくちゃ仲いいけど、そういう意味で好きなんですか?横恋慕してるの?」
「いや、知らんけど。…まあ、ともかく。それであんだけ切れる女がガキこさえて五年ほっといた男に友好的に接するのはないわ…」
「…じゃあ結局なんなんですか?」
「さあ? あの金髪の人がなにか事情あって育てられなくて、お嬢さんが育てるんじゃないか?」
「えー…あの人はあれですか。アホなんですか」
「あほだな」
「まあ、うちの師匠と同じ類のアホですね、お嬢さんは」
「んな二人で声をそろえて。
 ……。……。…まあ、よくわからんし、それでいいのか、って気はしますけど。いいのかもしれないですよね。…師範、あんな優しそうな顔するんですね」
「…そうだな」
「割と険しい顔してますよね。あ、でも差し入れ持ってきてくれると気はあんな感じかぁ。…っていうか。稽古つけてる時ですね。険しい顔してるのは」
「……ちょっと前は始終へらーっとした顔してる子だったよ、あの子」
「そうなんすか?」
「……そうだったんだよ。…それこそ、なにあったが知らんけどなぁ」

まあ親意外はつっこまず穏やかに見守りそうですね。
基本周りにアホしかいないから。中崎さん。

そういう人なんです

「…ところで、先輩」
「なんだ」
「仮にあの子の母親が三鷹さんだとしてですよ?
その場合結婚機にうちの師範とこに預けたことになりますよね?
なら金髪じゃなくて親友責めるべきじゃないんですか?師範は。こう、親の都合でふりまわすな、って。」
「いや、親友に苦労かけやがって、と相手の男をぼこるよ、あの女は」
「理不尽」
「理不尽なあほなんだ。お嬢さんは。
…大体、篠塚さんに男のかげなど…なかったし…産んでる気配ありゃ分かるよ、よくお嬢さん迎えきてたから…」
「…先輩」
「なんだ」
「好きだったんですか?あのキレイな人」
「黙れ」

この会話文の先輩は地下アイドル二枚目として作成してた次期道場主です。

もしサトカさんが先日の鈴木さんと冬樹さんのいい女紹介するしない話を聞いていたなら

 可愛い子を紹介かあ。

 中学高校の子は…鈴木さんの人柄は…ナンパだし物騒だけど…、…人柄は…別に文句をつけるようなところは…ないか。
 でも、職がどうみてもなあ…。
 やる時はヤる側だろうなあこの人。
 そうなると紹介はちょっと…そういえば年も離れてるなぁ…。

 冬樹さんもな…職と人柄はともかく…。
 普通の…穏やかに暮らしてる友人に…紹介できるかというと……うーん。でもそういう人とこそ幸せになってほしい気もするけど…。友人が苦労しそうなの分かって紹介するの、気が咎めるな。
 穏やかじゃないに慣れた人…
 …変なことに引かずにかかわって言った人達……?

「…紹介できそうなの連絡先知らないお医者さんと学生しかいない…!」
「何の話だ」
「学生は二人ともアウトです…!すごくアウトです…!」
「だから何の話だ」
「草薙さんは…あの人はいい感じにあしらっちゃうと思うし…」
「え、草薙ちゃん? なんや草薙ちゃんの話? それは聞きたいわァ」
「あともう………いないなあ(この世に)」
「…とりあえず喋るな」

〜落ち着け言われたから落ち着きました〜

「……」
 お二人ともそれぞれにアレなところあるけど、まあ、人のこと言えないし。
 あれだけどそういう気持ちがあるならそういう形で幸せになれるといいなあ…。
 …変なことに巻き込まれ慣れてて、かつ、こう…。…そうだなあまあお嫁さんは一般的にこう、理想論ならたおやかで芯の強い大和なでしこみたいなのがいいんじゃないのかな。見たことないけど。
 ……ん?
 …たおやか、いうか。ちょっとはかなげで…面倒見のいい…
 すごくきれいな…
 ……日本さん?

「連絡先交換してないし男!」
「だからさっきから何なんだ」
「どうしよう私の知人の中で有数に大和なでしこっぽい方男性でした! あと奥さんがいます!」
「何の話なんだ…」

さらに落ち着いてみました

「そもそも理想とかじゃなく、もっと地に足ついた可愛い系とか、こう絵に描いたように女子力ある人ならいいですよね!」
「ええなあ。女子はみんなかわええけどな!」
「鈴木さん、話を広げないでくれ」
「で、こう、料理が上手、みたいな…」

 ああ、野菜。これだけあれば作れますね。色々と。
 ええ、お任せください。得意ですから。

 そこは猫の手ですよぉー。猫の手わかります?

 美味しい? それは良かった。
 ええ、おかわりもどうぞ。

「……気遣いが上手、みたいな……」

 荷物重たいでしょう? 持ちますよ。
 暑いのに無理するからですよ。ほら、休んでください。

 体調が悪い? なら休めるところでも探しましょうか。

「…やっぱり男だよ!? どうしよう男です!」
「男は嫌やな…」

いや。ふって思って。
びっくりするくらい、あてがないな、って!

セミの声が響く頃

 ガリガリと氷をかく音が響く。
 電動のものを買おうと思ったのだけれど、よく考えるとあの滑らかな氷はお店で食べてこそではないだろうか。お店で食べて、綺麗な器に盛られてきて、それでこそな気もする。あと単純に、可愛かった。すごく可愛かった。このかき氷器の、とぼけたペンギンの顔が。
 ガリガリと氷をかく。ぐるぐるとハンドルを回す。
 削られていく氷を見る瞳に、ほんのりと心があたたかくなる。

「次はする?」
「はい」
「そっか、じゃあ。気をつけてね。…人に触るくらいの力でね」
「はい」
 キラキラとした氷に、もっとキラキラした眼差しが注がれている。
 落ち着き払った言葉遣いに見合わぬ、好奇心いっぱいの眼差し。
 …違う。
 幼い体躯。偏った情緒。そのすべてに、この子の言葉遣いは、判断力は見合っていない。
 …態度は年相当といえば、そうなんだけどな。いや、ある意味もっと幼いのか。
 ……別に、これからすりあわせていけばよいことだ。
 とりあえずは、なによりもまず力加減。それを覚えた様ならば、幼稚園にでも行ってほしいところだ。
 ……傷つかずに生きて欲しいと思うなら、もう。このまま二人とこの子を知る数名で生きて行った方が、きっといいのだろうけれども。
 それでも、きっと。そうして囲んだところで、すべての傷から守ることはできない。
 ならば、少しずつ。傷ついて、立ち直って、歩いていってほしい。
「シロップ、イチゴとメロンどっちがいい? まあ、こういうのあんまり味変わらないけど。気分で」
「……どちらがいいのでしょうか」
「どちらもいいんだよ」
「…あなたは」
「どっちでもうれしいよ」
 ぽん、と頭を撫でると、パチリと瞬きが一つ。
 長い睫毛が日差しを受けて、キラキラと輝いて。白い頬が暑さで蒸気し、まるで紅でも刺したように。
 お人形さんみたいな顔だな、とたまに思う。
 思わないような表情をするようになってほしいな、とも。
「…じゃあ、両方」
「あ、それ、昔やったなあ」
「そうなんですか?」
「うん」
 ぽん、ぽん、と。意味もなく頭を撫でてみた。
 くすぐったそうな顔も、期待に満ちた顔も、人形のようではないので、安心した。

あの子とすごす夏の話。きっととても幸せな日々。
養子にはしないけど我が子とは思ってるし母親と呼ばれるなら別に何の抵抗もない。
実際独身一人暮らし自営精神病院通歴ありに子供預かる許可が下りると思えないけどきっと三鷹さんに頭でも下げたんじゃないですか。マネーイズパワー。

同じ場所を見てる

 風が吹くと、金糸の髪がさわさわ揺れる。
 そこは公園のベンチの上。
 遊び疲れて眠る子に膝をかして、女は小さく呟く。
「…この子ってやっぱり大きくなったらルカさんに似るんですかね」
「そうですね。似ているだけで別物ですが」
 これだけ優しく愛情をかけられたものなど、もう自分とは。
 声に出さぬ声を知る由もなく、女は続ける。
「…つまり将来的に背が高く育つ、と…。確実に見下ろされる…のは仕方ないですね…うん。男の子ですものね。ルカさんに似ずとも…」
「ははははは。女性は小さいくらいで愛らしいじゃないですか」
「えー…?」
 嘘っぽいというよりとても軽い。 昔ならさぞ腹が立っただろう。
 今は、少し寂しい。 もう二度と会えぬ探偵の口上を、少し思い出すから。
『報酬はデートでいいよ?』
『え、そんなに怒らなくても。冗談なのになあ』
『ねえ、先輩。こっちも真面目ですよね?』
 そう、自分は彼の友人に対する態度にとても腹を立てて。随分ときつく当たった。
 きっとあちらは、どうでもよいと思っていたのだろうけど。
 なによりも―――別人に優しくしてみたところで、何の意味もない。
 胸の内で呟きながら、彼女はたまに考える。
 亡くなった彼に対する意味はないけれど、今目の前にいる彼には意味は何かあるだろうか。
 それとも、彼にとっても意味がないことだろうか。自分の態度とか、心象は。と。
 出会った直後から随分と良くしてもらった。その理由はおそらく彼女自身ではなく、彼女の親友と、彼のなにかのこだわりだろうから、と。
「…ルカさんは」
「はい?」
「口がうまいし女性にはそこはかとなく優しいし隠し子山ほどいそうですよねえ…」
「えー。心外ですー」
 本当に? とは言わなかった。
 言ったところで自分に本当は語らないだろう。この手のことは、ことに。
 その程度は、彼のことが分かる。
 その程度しか分からない。
 ただ、膝で眠る子供を見る目が、少し。
 少し、自分では理解できない感情に彩られていると思うだけ。
 それが少し悲しくて。
 それが少し―――以前の親友を思い出すだけ。
 あの黒い男と出会う前の彼女を思い出すだけ。
「…あなたは」
 あなたは、そして篠塚巴は。
 自分のことが好きじゃないんでしょうね。
「……見た目だけなら王子様みたいなんですけどねえ……」
「すっごい含みがありますね? いいんですよ、王子様みたいと言いきってもらっても」
「んー…でも王子っぽくはないと思います」
 受ける印象は、どちらかといえば真逆だ。
 例えば、塔に閉じ込められたお姫様。
 例えば、目覚めのキスを待つお姫様。
 作り物みたいに綺麗で、茨で囲まれ、誰も寄せ付けず。
 愛情で鍵が開く。未来に進む。
 ―――昔の彼女のように。
「だって、王子様ってそんなに甲斐甲斐しくないと思いますよ。
 そんなところに立ってないで、座って休んでくださいよ。せっかくあったんですから」
 だから、いると良いと思う。
「いえ、暑そうだったから心配で。差し入れにきただけですよ。…彼、運びましょうか? 家まで」  
 ―――綺麗に笑うこの人が、泣いたり怒ったりできる人が、いると良いと。
 あるいは―――彼女に対するあの男のように。  
 全身全霊で彼のことをなによりも大事にする人が。
 そんな人がいればいいのに。
「日傘あるし。もう少ししたら起こしますから。大丈夫ですよ」
 冷えた缶を受け取り、笑って答えれば、そうですか、と柔らかい声が返る。
 本心から柔らかいのかなど、彼女には分からない。

 風が吹く。
 健やかな寝息を立てる子供の髪がさらさらと攫われ、あらわになる額は雪のように白い。
 暑く湿ったこの国の空気は、この子や彼には辛いのかもしれない。
 それでも―――……
 それでも、ここで出会ったのだと。
 ぼんやりと思い、女はそっと息をついた。

 同じ場所を見ている。違う位置から見ている。だから目線が合わない。
 この二人お互いに悪意があるわけでもないけど「誰か傍にいてくればいいのにね(だが自分がなる気など欠片もない)」っていうそこはかとない地獄感がやばいと思います。どうしてこうなった。

毒を帯びた献身後日談SS

 自分勝手に生きてきたから誰かのためにできることはいつもうまく浮かばない。
 卵が先か、鶏が先か。
 私が気を遣っているからルカさんも気を遣うのか。彼に気を遣われてる気がするから、私も気を遣っているのか。
 ふと思うけれど、同時にどうでもよくなる。

 どっちにせよ同じだ。結果は。

 私は彼に気を遣っているし。
 彼は私に気を遣っているのだろう、きっと。

 物腰柔らかく、笑顔が素敵。
 皮肉というか、揶揄というかが他の人に向いているのを見たことあるけれども。あるからこそ。
 ものすごく気を遣われているのだろうなあ、とは思う。
 なぜなのかはよくわからない。
 いや、以前は。
 以前というか、最初に会った時は。
 散々な目にあったあの時は、気を遣っているのだと思った。

 私ではなく、三鷹巴に気を遣っているのだなあ、と。
 そんな風に思ったから、たぶん彼が怖くはないのだろう。

 だから、怖くなったのは別のことだ。
 夢か本当かもわからないあの時だ。

 あなたのためですと言われた。
 嫌だと言っていたのに。犠牲だと言っていたのに。
 一番被害が少ない方法だからと、そんな風に言われた。

 ルカさんは何も悪くない。
 悪いとしたらあの男が悪いし、私の聞き分けが悪い。
 それでも、そうして人任せにして。かつてどれだけ、死にたくなったか。

 ああ、別にあの人はルカさんとは違うだろうけど。
 こちらを守ろうとかは、思っていなかったんだろうけれども。
 最善手だと、きっと私には分からない合理で動いていたんだろうけれども。

 それでも嫌で、怖くて、あの時も怖くて。
 嫌で仕方ないのに代理案が浮かばないところまで、あの時とよく似ていた。

 似ていたけれど、違うことは。
 彼は話しかければ話しかけるだけ答えてはくれるし、色々と譲歩してもらっているのがさすがに分かる。
 それこそ、昨夜―――といいっていのかよくわからないあの時も、そうだ。
 もっと楽に、なんなら部屋をうろうろすることもなく、さっさと最善手をとったのかもしれない。ルカさんは。

 ……優しいのかな。
 優しい人がものすごく手慣れた手つきで銃操るかは置いておいて。優しくしてはもらっているんだろう。とても。

 だから、優しくしかえせるといいと思うのだけれども。
 それができているのかも怪しいというのが、本当のところだろう。

 卵が先か、鶏が先か。
 …今だって、どうして。無事を確認したかっただけなのに微妙に気を遣わせたような。…自分でも信じていないようなことを、肯定させてしまったような。
 ………どうしてこう、うまくいかないのだろう。
 …というか。
 うまくいかないのに、関わろうとするのはなんでかな。

 助けてもらった恩だろうか。
 共通の友人がいるからだろうか。
 あの子の家族のようなものだからだろうか。

 なんとなしにスマホを撫でて、なんとなく息をつく。

 どれもいまいちしっくりこないから、やっぱりよくわからない。
 分からないけれど――そうだなぁ。
 せっかく会ったのだから、できれば仲良くしたいと思うのは人情だろう。たぶん。
 とりあえず一緒にご飯を食べるとおいしい程度には、親しく思っているのは確かだし。
 ご飯。そうだ。外出る準備、早くしないと。なんか、すごい張り切ってるし。あの子。いや。張り合っているのだろうか。もしかして。
 ……ああ、そうだ。そうだなあ。切なくなる程度にはおとなしいとはいえ、子連れだし。

 玄関で待機してたあの子を呼び戻しながら、発信履歴を呼び出す。
 つい先ほどかけたばかりだけれども、もう一度電話をかけなおす。

「ルカさん、さっきのご飯の話ですけど。天気もいいし、おべんとでも作って外で食べましょう。
 今から私達おにぎり作るけど、朝ごはんまだだったり、暇なら来ますか?」

みたいなことをあの後やってそう。
巻き込まれたことが危ないことだという認識はあるので巴さんに言うのかもしれないし、怪我してないから言わないかもしれない。「道端に変な模様書いてたら見ないで走ってね。それでなんか変な目にあったから!」程度の言い方で。

しかしルカさんと中崎さん関係性突き詰めると不毛の大地だけどやってること仲良くて首をかしげる。
子はかすがいなのかもしれないし、別に関係ない気もする。
謎の人間関係ですね。いや本当に。なんでこんなに込み合っているんだ、人間関係。

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